サッカー元日本代表MFのタレント前園真聖(43)が22日、都内で日刊スポーツの取材に応じ、23日(日本時間24日未明)にW杯アジア最終予選UAE戦を控える日本代表について語った。

 前園は勝ち点3の死守と、UAEの10番を背負うMFオマル・アブドゥルラフマン(25)を、中盤で完封することが重要だと強調。MF長谷部誠が右ひざの故障で離脱した苦しい状況の中、ボランチの起用がポイントだと分析した。

 -UAE戦の位置付けは

 今回のアウェー戦が、1つの勝負だと思う。初戦で負けている相手ですし、サッカーファンの方は心配されていると思いますが、海外組の主力がクラブで試合に出られていないことが不安要素。でも、僕は勝ち点3を最初から取りに行く戦いをしないといけないと思う。最初から引き分けを狙うと厳しくなるし、足元をすくわれると思います。ちゃんと走ることが出来て、コンディションのいい選手が大事だと思いますね。

 -16年9月にホームで戦った初戦では、オマルにボールを持たれた上、オマルを中心とした組織力にも苦しめられた

 オマルは初戦の時、日本を含めた中で、1番効いていた選手。彼がボールを持つと、いろいろなアイデアが出る。ボールを持ってもうまいし、わざと中盤から守備ラインまで下がって、ボールをはたいて、また前に出たり…自由を与えられている選手だと思うので、日本の選手は、つかみにくいでしょう。マンツーマンとまでは言わないですけど、彼からのボールの配球を断つことが1番、重要。見ていても、彼はうまい。飛び込んだらかわされるし、味方に近づいてボールをもらって、そのまま1タッチではたいて、前に当てて(相手陣内に)入っていったり、いろいろなやり方がある。オマルを止められず、自由を与えると厳しい。

 -オマル封じの意味でも今季、所属のフランクフルトでDFとして新境地を開きながら、右ひざを痛めたMF長谷部誠の離脱は痛い

 そうですね。海外でプレーしている選手の中ではコンスタントに出ているし、精神的支柱でもある。ボールを奪う能力、ポジショニング、スペースを埋める能力は高いですから。でも出られないのはしょうがない。セレッソ大阪MF山口蛍の負担が出てくるのもポイントですね。

 -DF酒井高徳が所属のハンブルガーSVでボランチとして起用され、プレーの幅を広げたことは好材料

 誰をボランチに起用するかは、ポイントになってくると思う。

 -ドルトムントで出番が少なかったMF香川真司は復調傾向にあるが、MF本田圭佑は以前、ACミランで出番に恵まれず、試合勘の不足は明らか

 インテル・ミラノDF長友佑都を含めて、今まで代表を引っ張ってきた選手が所属クラブで試合に出られない中、ヘルタFW原口元気が、W杯アジア最終予選で4戦連発。非常に良く、これまでは原口に救われた部分があった。その原口が、18日のケルン戦で途中交代。本田は、どうしても試合勘がすぐにはフィットしにくい。状況を見ると、ベンチスタートもありえる。でも、日本が苦しい中、これまでも大事なところで決めてきた本田の経験値は必要だと個人的には思っています。香川がここ2試合くらい、良くなってきたのは救いです。

 -ガンバ大阪MF今野泰幸の2年ぶりの代表復帰については、どう思うか?

 ハリルホジッチ監督の選手選考は分からないですが、今野本人のコメントを見ても、ビックリしているくらいで、まさか自分も? という思いもあったと思います。逆に言えば、長谷部がこうなったことで、ボールを奪う、相手を自由にさせない選手は必要。長谷部がいなくなった今、今野を入れて置いて良かったのかなと思う。中盤では、オマルを含め向こうにやらせない守備が大事だというのが大前提だと思います。

 -本当に厳しい戦いになる

 W杯アジア最終予選は、これまでも簡単にいった試合はないです。加茂周監督が、97年10月にアウェーのカザフスタン戦に引き分けて更迭されたり、アウェーで負けたりもあった。今回は、主力の選手たちが所属クラブで、なかなかいいプレーを発揮できていないのが心配。試合に出ているとコンディションもいいし、自信を持ってプレーできる。

 -他のアジア地域のレベルが上がっている

 28日に戦うタイには負けないと思いますが、タイだって僕らが代表にいた頃のタイじゃないし、中東も違う。(レベルが上がった)UAE戦で勝てるかが、今後の日本サッカーのことを考えても、本当にカギになる。勝ち点1じゃダメじゃないですか?

 前園はこの日、都内で行われたグリーンハウス家庭用ビアサーバー発表会に参加した。壇上での軽妙なトークには磨きが掛かっているが、やはりサッカーのことを口にすると眼光に鋭さが増す。前園は、日本から遠く離れたUAEで決選を控える、日本代表の後輩たちを思い、見守っている。【村上幸将】