昇格組の今季1番星を湘南がつかみました。主役は1得点1アシストのDF遠藤航(22)。後半9分に自ら倒されて得たPKを決めると、後半ロスタイム1分には右クロスでFWアリソンの頭を射止めて決勝点を演出。敵地で鹿島に勝ったのは95年以来20年ぶりで、当時まだ2歳だった男が負の歴史を塗り替えました。

 7日浦和戦に続く開幕2試合連続のPK弾。J1では日本人初の快挙です。PKで有名なのはG大阪のMF遠藤ですが、湘南ではDF遠藤。「自分が蹴る時は緊張しないけど、仲間が蹴るとドキドキする」と不思議な心臓の持ち主で、高卒1年目に当時の反町監督からPK練習を義務化され、19歳の2年目に7得点中4得点をPKで挙げました。

 さらに評価が高いのが「万能性」です。湘南では3バックの右ストッパーですが、リオデジャネイロ五輪を狙うU-22日本代表では4-4-2のボランチ、4-3-3のアンカー、センターバックを歴任。同代表の手倉森監督が「見てきた選手の中で最も賢い。将棋じゃないけど、何手も先を読む洞察力が抜けている」と絶賛し、コーチを兼ねるA代表に「今年中に引き上げたい」と推す選手です。

 ハリルホジッチ新監督はポリバレントな(複数ポジションをこなす)選手を好むとされており「いろんな特徴があることが特長」と自己PRする遠藤選手が「ハリルの申し子」になる可能性は十分。東京FW武藤や鹿島MF柴崎と同じプラチナ世代、でも早生まれのためにU-22代表を引っ張る有望株は「同期は既にA代表で活躍している。負けられない」と燃えています。

 キャプテンシーも◎。湘南では19歳でゲーム主将を任され、U-19代表、U-22代表でも主将。昨オフには獲得を狙う浦和から大金を積まれましたが、断りました。おとこ気もある「湘南の若大将」。今月は五輪予選が優先ですが、6月のW杯予選は呼ばれても支障はありません。【木下淳】

 ◆遠藤航(えんどう・わたる)1993年(平5)2月9日、横浜市生まれ。南戸塚中から湘南ユース。高校3年時の10年に2種登録でプロデビュー。同年12月の新潟戦で初得点。11年トップ昇格。16歳から世代別代表で10年のU-19アジア選手権では飛び級の17歳でレギュラー。J1通算25試合6得点、J2通算104試合15得点。家族は夫人と1男1女。好きな選手は同じ178センチの元スペイン代表DFプジョル。利き足は右。75キロ。血液型O。