3年連続得点王を狙う川崎FのFW大久保嘉人(33)が、G大阪戦で2得点し、今季21得点で得点ランクの単独首位に立った。19得点で並んでいたG大阪FW宇佐美の目の前で、先制ゴールと勝ち越しのPKを決めて2差をつけた。J1通算154得点で、中山雅史の歴代最多157得点まであと3とした。チームは乱打戦を制して4連勝で第2ステージ5位に浮上。年間3位に滑り込んでのチャンピオンシップ出場にはずみをつけた。

 3-3で迎えた後半30分。DF車屋が倒されPKを得ると、大久保がボールを持ちキッカーに名乗り出た。だが、なかなかペナルティースポットにボールを置くことができなかった。内心は揺れていた。6月20日のホーム松本戦ではPKを蹴るも止められ、8月の横浜との練習試合ではクロスバーに当てた。2度の失敗を引きずっていた。

 大久保 できれば蹴りたくなかった。でも誰かに譲っても、後で絶対に「外してもいいから蹴っておけば良かった」と後悔する。自分が得点したら間違いなくチームも乗る。

 PK失敗で引き分けに終われば、第2ステージ優勝も年間3位も絶望的になる。そんな状況で、G大阪の日本代表GK東口の逆を突き、右隅に蹴り込んだ。エースの責任を全うした。

 追い込まれても強い。前人未到の3年連続得点王がかかるも「13年に比べたら全然、プレッシャーはない」と、神戸から川崎Fに移籍したシーズンを思い起こすように話す。初の得点王を狙える位置につけた13年終盤は「ここで得点王をとらなければ2度とチャンスはこないかも」と精神的に追い込まれた。7試合連続無得点など不調が続き、眠れない日もあった。寝ても覚めても「得点」が頭をよぎり「こんな苦しい思いをするなら、得点王争いをしたくないとまで思った」と当時の心境を打ち明ける。

 その苦境を「シュートを打ち続ける」と腹を決め、練習でも試合でも、ひたすら足を振り抜いて脱した。「あれで精神面を鍛えられたことが大きかったし、自信もついた」。嫌なイメージが残っていたPKを決められたのも、ベテランゆえの経験値があったからだ。

 J1通算154得点に伸ばし、次節は中山の最多記録に王手をかけるFW佐藤を擁する第2ステージ首位の広島戦だ。「個人的にライバルをつくったことはないし自分は自分。自分が点を取ればチームも乗るし勝つ。そこだけを意識したい」と頼もしかった。【岩田千代巳】

 ▼記録メモ 川崎FのFW大久保が2ゴールで、今季得点ランク単独トップの21得点目。J1で年間20ゴール以上は、自己最多26得点をマークした13年以来、2年ぶり2度目。シーズン20ゴールを2度達成した日本選手はカズ、武田、福田、中山に次いで史上5人目。J1通算得点は154点に伸ばし、中山が持つ157点の歴代最多記録にあと3点と迫ったが、1試合2得点以上の「マルチゴール」は今回が33度目で、こちらは中山の33度に並ぶJ1最多タイ記録となった。