11年以来のJ1復帰を目指す福岡が長崎を下し、J1昇格プレーオフ(PO)決勝に進出した。猛練習を積んだセットプレーで先制すると、自慢の堅守で今季J2最多13試合を数えた「1-0」で振り切った。福岡はリーグ戦からの連勝を「9」に伸ばした。決勝は12月6日にヤンマースタジアム長居で行われる。

 福岡が自慢の「おしくらまんじゅうCK」で長崎の挑戦を退けた。均衡を破ったのは後半3分だ。フィジカルやヘディングが強い6人がゴール前で密集をつくり、ボールが蹴られた瞬間にニアやファーに散って得点を狙う自慢の形がさく裂した。キッカーのMF末吉がゴールに向かって弧を描く、速く低いボールを入れ、ニアでFW酒井がそらし、中央のFWウェリントン(27)が決めた。元日本代表DFの井原正巳監督(48)がたたき込んだ戦術が大一番で花開いた。

 先制したウェリントンは両手を広げ、ジャンプしながらベンチへ猛ダッシュ。選手やコーチらに抱きつかれ、もみくちゃになった。昨季も湘南のJ1昇格に貢献したブラジル人助っ人は「集中してチャンスを待っていた。決勝は2ゴール決めて2-0で勝ちたい。チームをJ1に上げる」と興奮気味にまくし立てた。

 J2最終節の岐阜戦でも決めた得意技。長崎は今季リーグ最少タイ33失点ながら、セットプレーからの失点が多いデータがあり、うってつけの“飛び道具”だった。主将のMF城後は「福岡のストロングポイントなので狙っていた」。DF亀川も「いつもの練習通り。中で何が起こるか分からない」としたり顔。井原監督が「カギになる」と話していた先制点を奪えば福岡ペース。今季24勝のうち、「1-0」でJ2最多13勝を挙げており、POでも1点あれば十分だった。

 井原監督は、磐田名波、岐阜ラモスら日本代表でともに戦った監督たちに「ライバル心がある。同じ舞台で戦えることを喜びに感じながらやらせてもらっている」と語っていた。中でも長崎の高木監督は、同い年で同じ九州のチーム、さらに今季リーグ戦で2戦2分けだっただけに「決着をつける。点を取り、勝つ姿勢でいく」と燃えていた。そのヤマを越え、次はC大阪との決勝。「(舞台が)大阪というハンディはあるが、いいゲームをして勝てるようにしたい。あと1試合決勝で勝たないと意味がない」。就任1年目での快挙へ、気を引き締めた。【菊川光一】

 ▼記録メモ 3位福岡が6位長崎を1-0で下し決勝に進出。J1昇格プレーオフは12年に導入されたが、過去3年の年間上位チームの戦績は0勝2分け6敗と勝利したことがなく「下克上」が目立った。今季の福岡は初めて下位チームに順当勝ちしたことになる。もっとも、福岡の今季の勝ち点は82。4位C大阪(67)を15差も離していた。過去3年の3位と4位の勝ち点差はわずかで、12年が1差、13年が3差、14年が1差。3位チームがJ1に昇格できないジンクスを、今季の福岡は打ち破ることができるか。

 ◆J1昇格プレーオフ J2の3~6位でJ1昇格の3枠目を争う(1位と2位は自動昇格)。大会方式は各1試合のトーナメント制(計3試合)。準決勝は3位対6位、4位対5位の対戦で会場は上位クラブのホームで行ったが、決勝の1試合はヤンマースタジアム長居で開催。試合方式は90分間(前後半各45分)の試合を行い、引き分けの場合は年間順位の優位性を確保するため年間順位が上位のクラブを勝者とする。