アルビレックス新潟レディース(アルビL)は日テレ・ベレーザに1-0で勝ち、2年連続4度目の決勝進出を決めた。相手の分厚い攻撃にさらされた前半こそ押し込まれたが、風上に立った後半8分にMF八坂芽依(20)が値千金の決勝ゴール。虎の子の1点を守りきった。決勝は25日にフクダ電子アリーナでINAC神戸と対戦する。

 初優勝への夢に迫る価値あるシュートは、八坂の右足から生まれた。0-0で迎えた後半8分。前線でターゲットになったFW大石沙弥香(31)が頭で落としたボールをワンタッチで振り抜いた。ゴール右隅のネットにボールが突き刺さるのを確認すると、殊勲者はゴールに背を向け、両手を上げながら駆け出した。初Vへ夢をつないだゴールは、リーグ戦とカップ戦に継ぐ3冠を狙っていた日テレの「夢」も、打ち砕いた。

 「キーパーが左に寄っていたのが見えた。ニアの右隅が空いていた」。緊張を強いられるシュートシーンに八坂は冷静だった。「(前半は)耐えて、耐えて、後半に点を決められれば、と思っていた」とも、言った。アルビLのベンチ前まで走り込んで、辛島啓珠監督(45)と歓喜の抱擁。「本当はベンチのメンバーと喜び合いたかったけれど、監督が手を広げたから『来い、ということか』と思った」。喜びを爆発させる時さえ、20歳は冷静だった。

 八坂はチーム所属2年目。この日の先発平均25・5歳の中の最年少で、昨年はベンチ外だった。「悔しい思いを昨年、味わった」。チームが決勝敗退した悔しさ。試合に出られなかった悔しさ。言葉には二重の意味が込められていた。「最年少だから、積極的なプレーをしたい。ハードワークする」。決勝では、昨年の悔しい思いを喜びに変える。

 22日に糸魚川市で大規模火災が起こった。チームは19日から関東で調整。「テレビで見てショックを受けた」という八坂は「(被災者に)元気を与えられたら、と思った」とシュートに気持ちを乗せた。アルビLにとっては2年連続4度目の決勝。「新潟に優勝カップを持ち帰る」と話した八坂の表情は、みるみる引き締まっていった。【涌井幹雄】