<J1:浦和1-0大宮>◇第25節◇21日◇NACK

 浦和FW高原直泰(29)が値千金の一撃で、2年ぶりに「さいたまダービー」を制した。前半13分に雷雨で中断するハプニングに見舞われ、再開後の同27分、高原が相手GKの股間(こかん)を抜く技あり先制弾を決め、1-0で勝利。2位浮上に貢献した。24日にアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)第2戦アルカディシア(クウェート)戦、28日に首位名古屋との対決を控え、高原が力強く復活した。

 好調だからこそ余裕があった。前半27分、MF相馬からのパスをペナルティー内で受けた高原は、周囲を瞬時に察知できた。他選手に敵DFのマーク。飛び出てきた相手GK江角。1度、切り返すとGKの股間を抜く右足シュートで先制点を挙げた。高原は「パスを出しても微妙だったので自分でいった。最低限の結果は出せた」。自信にあふれ、満足しない、貪欲(どんよく)な勇姿があった。

 雷雨による57分間の中断で嫌なムードが漂った。7月27日鹿島戦でも同様の中断直後に失点した。その反省を生かした試合再開14分後のゴール。高原は「入り方は意識した。(鹿島戦と)同じ失敗をしなくて良かった」。この一撃がACL含め1週間2戦ペースの過密日程で疲労蓄積したチームを後押しした。阿部は「タカさんが決めて戦いやすくなった」と感謝した。

 復活への確信がある。これまでの1トップではなく、エジミウソンとの2トップに変更された。高原は「2トップでロビー(ポンテ)がトップ下。それを望んでいた」と歓迎。ACLでクウェートへの往復も「欧州との往復に比べれば、全然問題ない」と力強い。アシストしたMF相馬は「あのパス1本でゴールに行けるとは思わなかった」と高原に感嘆しきりだ。

 フランクフルト時代の06年12月、雨のアーヘン戦で高原はハットトリックを決めている。その試合のユニホームを大事に保管するほどの思い出の試合だ。スリッピーなピッチを好み、水気を含む重い芝で活躍できるのが高原らしさ。強靱(きょうじん)な下半身も戻ってきた証明だ。

 右太もも筋膜炎でFW田中達が離脱中。浦和のJ奪回、アジア制覇、何より日本代表のためにも、高原の復活が期待される。「次(24日アルカディシア戦)とその次(28日名古屋戦)はすごく重要。そこで決める勝負強さが求められる。今日はすごく手応えがあった」。高原が本来の力を発揮する準備が整ってきた。【藤中栄二】