<ナビスコ杯:東京2-0川崎F>◇3日◇決勝◇東京・国立競技場

 東京が川崎Fを下し、5年ぶり2度目の優勝を決めた。先制弾をたたき込んだMF米本拓司(18)は、ニューヒーロー賞に続いてMVPに輝き、新人では初、史上3人目のダブル受賞。

 無心の振り抜きが、「魔性の弾道」を生んだ。前半22分。米本はゴールまで約30メートル地点から、右足シュートを放った。「最初から打つことは決めていた。ただただ、思い切り打ってやろうと」。高速かつ無回転のぶれ球は、川崎FのGK川島の手元で左方向にスライドし、グローブをはじいてゴールネットを揺らした。

 「頭が真っ白になった。無回転は狙ったわけじゃない。コースも悪かったし。入ったからいいですけどね」と笑顔で振り返る。実は重圧を感じていた。「最初は体が思うように動かなかった。いろんな思いがあったから」。決勝を前に、伊丹高時代に東京の練習に参加して以来、兄と慕うMF浅利が、今季限りの引退を表明。米本は「サリさんに優勝をささげたい」と入れ込んでいた。

 恩師への思いもあった。城福監督とは、U-16日本代表時代からの師弟関係。総計200人も招集された中から、20人の最終メンバーに残った。しかしアジア選手権直前に、米本は右足第5中足骨の疲労骨折で、離脱を余儀なくされた。監督室で2人きりになった時、同監督は無念の米本のために、一緒に号泣してくれたという。

 浅利へ、城福監督へささげる、恩返しの1発。「あれで楽になって、体が動くようになりました」という米本は、中盤の底で日本代表MF中村をしぶとくマークし、川崎Fの攻撃を防ぎ続けた。視察した日本代表の岡田監督からも「将来性ある選手。もともとアジア杯予選の予備登録メンバーに入れていた」と絶賛された18歳。「サリさんたちの分まで、これから僕たちが歴史を作らないといけない」と、頼もしかった。