<J1:浦和2-3神戸>◇6日◇第20節◇埼玉ス

 夏の夜空に、親友の笑った顔が浮かび上がった。「やったぞ!

 ありがとう、マツ」。神戸FW吉田孝行(34)は喪章を右手に巻き付け、松田さんの背番号を表す指3本を天に向かって突き上げた。前半14分、ゴール前でのこぼれ球を左足で蹴り込む先制弾。そのわずか5分後には、相手守備陣のクリアミスから右足で2点目を蹴り込んだ。「たぶん、マツが決めさせてくれたんだと思う」と声を震わせた。

 生年月日まで同じだった松田さんとは、U-17日本代表からの付き合いで、横浜時代はチームメート。吉田が神戸に移籍後も連絡を取り合い「最後に会ったのは昨オフでした。この16年間、会わなかったことはなかった」という。松田さんが松本山雅に移籍する際も、クラブが発表する前に報告を受けていた。「俺がJ2に上げる。やりがいがあるんだ。お前も神戸をクビになったら絶対に来いよ」と。

 松田さんが倒れてから、すべてのことが手に付かなかった。練習場でも苦く沈んだ顔になり「チームに迷惑をかけてしまった」という。長野県松本市内へ見舞いに行く途中で親友は逝ってしまったが、家族の配慮で病室で松田さんに触れた。「何だか逆に、頑張れよと励まされた気がした」。翌日からピッチで笑い、主将としての役目に戻れた。

 この日は後半に追いつかれる接戦だったが、チームはロスタイムにFW大久保のPKで競り勝った。「マツは見てくれているし、一緒に戦っている」。吉田が闘将の情熱を引き継いだ。【山下健二郎】