<J2:水戸1-0富山>◇第2節◇11日◇Ksスタ

 東日本大震災から1年。特別な日「3月11日」に、水戸がホームで富山を破り、開幕2連勝を飾った。前半26分にMF小沢司(23)が値千金の決勝点を奪取。茨城県日立市が地元の2人、FW鈴木隆行(35)が決勝点を導き、主将のGK本間幸司(34)が完封劇を演出した。昨年の震災で被災した地元を少しでも元気づけたい-。チーム一丸で前進し続けるJ2クラブが、被災地へささげる1勝を挙げた。

 こみ上げてくる思いを隠せなかった。試合終了の瞬間、GK本間は空を見上げた。「いろいろな思いが頭を駆けめぐったら、こみ上げてきた。何とか踏ん張りましたけど」。あの3月11日から1年。感情を押し隠すのが精いっぱいだった。

 柱谷監督の「我々が前へ進む姿を見せよう!

 そのために、必ず勝たないといけない」というゲキに選手が応えた。前半26分に鈴木隆のヘッドのこぼれ球を小沢が詰めて決勝弾。最後は全員で体を張って守り「3・11の勝利」をつかんだ。

 あの時の恐怖は残っている。昨年3月11日午後2時46分。激しい揺れが水戸を襲った時、選手は練習中。照明設備がアメのようにしなり、地面が隆起した。ライフラインが止まりチームは一時解散したが、選手の気持ちは途絶えなかった。

 本間

 震災直後には「逃げた方がいい」と言う人もいたけど、おれは実家が日立だし、嫁の実家も水戸。そして水戸でプレーしている。逃げる場所がないから、逃げられないわけだし。それなら大変な思いをしている人たちと時間をともにして暮らし、一緒に前進していきたいと思った。地元とともに生きようと。

 本間は震災直後から行動を起こし、ボランティア活動に協力。「もっと大変な思いをしている人たちが被災地にはたくさんいる。サッカーができているだけ幸せ」。昨季途中から地元生まれの鈴木隆も加わり、県内の被災地を回って子供たちと交流する活動は続く。

 本間は言った。「1年前のことを忘れずに持ち続けたい。とにかく前へ前へ。前を向いてプレーをして被災地を盛り上げたい」。その思いを体現する重要な1勝だった。【菅家大輔】