<J1昇格プレーオフ準決勝:京都0-4大分>◇18日◇西京極

 ドデカモリ4発でJ1昇格王手!

 J2で6位の大分が、元日本代表FW森島康仁(25)の4ゴールの大爆発で3位京都を粉砕した。プレーオフの“秘策”としてキッカー役に指名された森島が、前半17分に直接FKを決めて先制するなど全4得点。愛称「デカモリシ」誕生の地元関西で4-0と大勝し、4季ぶりのJ1復帰に王手をかけた。昇格最後の1枠を懸けた23日の決勝(国立)は、大分と千葉が対戦する。

 神戸に生まれ、C大阪で育ち、大分に渡った“デカモリシ”が、京都でハットトリックを初体験した。しかも負ければもちろん、引き分けても進む道が断たれる新設のJ1昇格プレーオフでやった。「ハットトリックは完全に狙ってました。プロ初やし、それをこんな舞台で…」。

 後半16分にFW木島が得たPKで3点目を入れ、さらに終了間際もドリブル突破からGKの股抜きで4点目をたたき込んだ。186センチ、80キロとサッカー選手では異質のガッチリ体形がピッチで躍動。それでも「みんなにも『もっと取れたやろ』と言われたし、自分でもあと2、3点取れたと思う。(自己採点は)50点ぐらいじゃないですか」と笑った。

 J1昇格圏では最下位の6位から下克上を狙う大分は、森島も含めてガチガチの入りだった。京都に完全にボールを支配され、危ない場面を何度も作られた。田坂監督が「試合前は普通に入れるなとみていたのが、完全に裏切られました」と苦笑いしたほど。その緊迫を解いたのも、田坂監督がこの戦いに用意した「秘策」。前日の練習でいきなり、セットプレーのキッカーに森島が指名された。

 前半17分、秘策がはまった。押し込まれる一方の展開で、初めて得た直接FKのチャンス。「深く考えずに。風が右から左に吹いてて『風に乗ったらいけるんちゃうか』ぐらいで」。ポーンと蹴ったボールは華麗な軌道を描いてゴール右隅に刺さった。「モリシはキックの精度が高いし、スピードもある」と田坂監督はしてやったりだ。

 09年、大分のJ2降格が決まったのが、この日の会場だった西京極。選手、サポーターが特別な思いを持つ地で「借りを返したい」と臨んだ。京都を粉砕し4季ぶりのJ1復帰に王手をかけた。「ここはただの通過点。大分を元いた場所に戻すのが、自分のミッションだから」。“ドデカモリシ”に成長した森島が、下克上の風を強めて東上する。【実藤健一】

 ▼大分FW森島が4得点。1試合3得点以上のハットトリックはJ1とJ2のリーグ戦、ナビスコ杯を通じて自身初。大分としては通算6回目。過去5回はいずれも3得点で、森島の1試合4得点はクラブ史上最多となった。今回のJ1昇格プレーオフは初の試みだが、Jリーグのレギュラーシーズン後に行われた「ポストシーズン」でのハットトリックは、05年12月10日に甲府FWバレーが柏とのJ1・J2入れ替え戦第2戦(柏)でJリーグ1試合個人最多記録となる6ゴールをマークしたのに次いで史上2人目。

 ◆J1昇格プレーオフ

 J2リーグ戦の3~6位の4チームが進出。準決勝、決勝とも90分間を終えて引き分けの場合は、年間順位の優位性を確保するため年間順位の上位クラブが勝者に。既に1位甲府、2位湘南が昇格を決めた。