<J2:水戸0-0札幌>◇第35節◇4日◇Ksスタ

 J2札幌は水戸に引き分けた。前半15分に左MF上原慎也(28)が左膝を痛め、後半26分にはDFパウロン(24)が左太もも打撲で負傷交代。交代枠3つのうち、2つを負傷交代で使わざるを得ない中、チーム一丸で乗り切り勝ち点1をつかんだ。無失点は、バルバリッチ監督(53)就任後、5戦目で初。順位は10位のまま、プレーオフ出場圏の6位との勝ち点差は5に広がった。

 敗色濃厚な試合で、貴重な勝ち点1を拾った。バルバリッチ監督は「攻撃的に交代枠を使えず厳しい試合だった。そんな中、勝ち点を取れたことは大きい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。前半15分、上原慎が左膝痛のため、DF日高と交代した。前半の段階で左太もも前を打撲し内出血していたDFパウロンも後半26分に続行が厳しくなり、DF櫛引に代えた。前半17分にFW工藤を投入した以外は、DF2選手の交代を余儀なくされた。

 采配の肝となるベンチワークを満足に使えない状況の中、後半30分にはDF薗田が右足をつった。失点を避けるため、指揮官は薗田をFWに上げ、奈良、日高、櫛引の3バックで対応。急きょ本職ではないFWになった薗田は「DFとして最後まで役割をまっとうできなかったのが悔しい」と反省も、最後は力を振り絞り、相手ボールを追い込んだ。変則布陣の中、3バックに入っていた日高が、ゴール前に切り込みシュートを放つなど、全員が持ち場を超えて奮戦し、水戸の勢いをそいでいった。

 「3バックだから後ろの仕事だけというわけじゃない。チャンスがあったら誰が出て行ってもいい」と日高。バルバリッチ監督は、試合中に未経験のポジションに変更しても、常に柔軟に対応できるポリバレント性を求めてきた。日高は前節松本戦で、FWとして途中出場。今回は上原慎に代わりMFとして入り、終盤は3バックの一員ながら、前に飛び出し、相手を翻弄(ほんろう)するなど対応力をアピールした。

 上原慎、パウロンは明日6日に札幌市内の病院で精密検査を受ける。砂川、小野、河合、内村らに続き、また負傷者が出た。危機的状況だが、バルバイズムは、1戦ごとに選手の可能性を広げているのがポイント。11日の次節千葉戦までに、また新たな潜在能力を発掘し、勝利の新布陣を編み出していく。【永野高輔】