日本代表FW岡崎慎司(29)が所属するプレミアリーグのレスターが絶好調だ。

 13節を終え、8勝4分け1敗の勝ち点28。ユナイテッドとシティーの両マンチェスター勢やアーセナルら、強豪を抑えて堂々の首位に立っている。英インディペンデント紙(電子版)は「plucky underdogs(勇気ある弱者)」から「fearsome adversaries(恐ろしい対戦相手)」へと変貌したと記している。

 その攻撃力は際立っており、チームはここまでリーグ最多の28ゴール。中でもイングランド代表FWジェイミー・バーディー(28)が獅子奮迅の活躍を見せており、現在リーグ記録に並ぶ10試合連続得点中。得点王争いでも断トツ1位の13ゴールを決めている。

 だがインディペンデント紙は好調の要因が、ピッチ上の目に見える部分だけではないと分析する。

 同紙がまず挙げたのが、コーチ陣についてだ。今季から就任したのが、チェルシーやユベントス、ローマなどを歴任したイタリア人のクラウディオ・ラニエリ監督(64)。最近ではインテルミラノやギリシャ代表で結果を出せず、もはや終わった監督だと思われていた。

 そのラニエリ監督がレスターの指揮官に就任するにあたって希望したのが、ピアソン前監督のもとで働いていたコーチ陣の残留だった。サッカー界では通常、新監督は気心の知れた自身のスタッフを新たに雇うもの。ラニエリ監督の希望は異例だった。

 実はレスターは昨季終盤からすでに好調だった。4月から計算すると、レスターは現在勝ち点50で、マンCに6点もの差をつけてプレミアリーグトップとなる。その頃からのチーム状態を良く知るコーチ陣を残留させたのは、ラニエリ監督による英断だった。

 GKシュマイケルは「自分のスタッフとともにやってきて、チームの全てを変えてしまうようなやり方をしなかったのは、ラニエリ監督の素晴らしい部分だと思う。監督は、すでにチームがうまく機能していて、コーチ陣も選手を良く分かっていると見抜いたんだろう」と話す。

 残留したスタッフの中でもスティーブ・ウォルシュ助監督の存在は大きい。スカウト業務も兼務する同助監督はチェルシー時代、ゾラやフリット、ビアリら大物を続々獲得。当時ラニエリ監督をチェルシーに招いたのもウォルシュ助監督だった。

 現在欧州で注目の的となっているアルジェリア代表FWマレズをわずか40万ポンド(約7550万円)で獲得したのもウォルシュ助監督のスカウティングによるもの。その指導でMFドリンクウオーター、MFオルブライトン、DFシンプソンらは別人のような選手に生まれ変わった。

 またレスターはトップチームの強化と同様に、アカデミーの整備にも力を入れている。ウェールズ代表MFキング、ガーナ代表シュルップはともに下部組織出身だ。

 タイ人のスリバダナプラバ・オーナーは14年に「3年間でレスターをプレミアでトップ5のチームにしてみせる」と豪語して嘲笑された。だがどこかのチームとは違い、同オーナーはチーム編成には口を出さない一方で、200億円近くあった負債は完済。模範的な経営者としてレスターを着実にトップクラブへと導いている。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)