<ロシアリーグ:CSKAモスクワ1-0クリリア・ソベトフ>◇19日◇ロシア・サマラ

 CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(24)が、リーグ復帰戦でいきなり3つのポジションでフル出場した。アウェーのクリリア・ソベトフ戦に「やるつもりはない」と公言してきたボランチで先発。後半は選手交代に伴い左サイド、トップ下と移動した。チーム事情もあるが、前線でのプレーを望む本田と、レオニード・スルツキ監督(39)の描く選手像にズレがあるようで、試合後は苦悩の表情を見せた。試合はCSKAモスクワが勝ち2位に浮上した。

 望まないボランチで先発し、計3つのポジションをこなした本田は試合後も歯切れが悪かった。自らのリーグ再開戦で、W杯以来となるフル出場。チームも勝った。だが、表情は曇っていた。

 ボランチ起用かとの問いに「そうですね」と答え「気持ち的には、複雑ですね…。落ち着いてから、監督と話をしたい。今日の試合は勝ったことだけが収穫」と続けた。前半はダブルボランチの相棒MFママエフを残し、自らの意思で積極的に攻撃参加したが「監督はあれ(攻撃参加)を望んでいないから」。ハーフタイムの指示を経て、後半はより最終ラインに近い位置で相手を追い回し、体を張る仕事を強いられた。

 W杯前のリーグでボランチ先発が続き、スルツキ監督に攻撃的なポジションでの起用を直談判した。その後、W杯で2得点を挙げ世界の舞台で得点能力を実証。自信を胸にロシアへ出発した11日には「ボランチをやるつもりはないですよ。監督には言ってあるんで大丈夫だと思いますが」と話していた。しかし、リーグに戻って任されたのは中盤の底のポジションだった。

 守備的MFがケガや出場停止のチーム事情はある。本田自身もそれが分かるから、声を荒らげるようなことはしない。日本代表でもいきなり1トップを任されて、世界の強豪相手に2得点を決めたように、複数の役割を難なくこなす本田の力も災いしている。1トップからボランチまでこなせる選手はチームに本田だけ。スルツキ監督がすがりたくなるのも分かる。

 ただ、本田は納得していない。欧州で得点を重ねて名を売って成り上がる「本田圭佑物語」が頭にある。「もう24歳」と自身を追い込む状況で、回り道などしたくない。90分で3つの役割を与えた指揮官が描く選手像とのズレを「監督は何でもできると思っているみたいで…」と吐露。ピッチ内のプレー、コメントからも本田の最大の持ち味である「攻撃性」が薄れていたのは気がかりだ。【八反誠】

 [2010年7月21日8時51分

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