MVPラインに到達。競泳女子100メートルバタフライで、池江璃花子(18=ルネサンス)が、56秒30で優勝した。先行する中国人選手をとらえて逆転勝ち。自身が持つ日本記録56秒08と0秒22差のタイムで4冠。14年仁川大会でMVPを獲得した萩野公介と同じ金メダル数となった。第1泳者だった800メートルリレーは7分53秒83で銀メダル。MVPに明確な規定はなく、印象度で決まるために、残り3種目でもさらに優勝する。

 狙い通りのレースで4冠だ。池江は浮き上がりで2番手もすぐに先頭。ラスト25メートルでスピードを上げて、後続を突き放した。本命種目を制して「レースプラン的には完璧」と分析した。

 さすがに疲れを感じていた。予選は自己記録より1秒以上遅い57秒81で全体の2位。「今までにないぐらい体が動かなかった」。この日でパンパシフィック選手権から13日間で13種目。予選後はジャカルタに駆けつけた三木コーチから「超一流を目指すなら、どんな大会でも負けないこと。落ち着いていけば問題ない」と、アドバイスを受けた。

 疲労があっても、自分を見失わなかった。初優勝したパンパシでは50メートルのターンでドルフィンキックが速いダリア(米国)につられて、一気にギアを上げすぎた。日本記録は出したが、最後の15メートルで失速。三木コーチは「焦ってしまってテンポを速くなりすぎた」と分析。この日はその時できなかったプランを忠実に実行して「いいレースができた」と池江。18歳は勝負勘の面でも成長している。

 800メートルリレーは中国に敗れて2位だったが、これで金4、銀1を獲得。金メダル数は14年仁川大会の萩野と並んだ。MVPは全競技を通じてのもので、明確な規定はなく、印象で決まる。開催国インドネシアはバドミントンが人気で、地元の有望選手がいない競泳の注目度は必ずしも高くない。残り3種目。「勝ち癖をつけていきたい」。18歳は勝利、勝利また勝利を誓っていた。【益田一弘】