男子100メートルのケンブリッジ飛鳥(22=ドーム)が、初の五輪に名乗りを上げた。追い風0・7メートルの同予選で自己記録を0秒11更新する10秒10をマーク。五輪参加標準記録(10秒16)を突破した。「陸上王国」ジャマイカ人の父を持つ22歳は9秒台を目標に掲げた。

 大きなストライドで加速した。ケンブリッジが2位以下を0秒90も引き離して独走した。追い風0・7メートルで10秒10。会場のどよめきを聞いて右腕を振り下ろしてガッツポーズ。準決勝は棄権したが、五輪参加標準記録を突破し、五輪代表候補に急浮上した。「タイムを狙っていた。やっとという感じ。正直うれしい」。

 ボルトらを生んだ「陸上王国」にルーツを持つ22歳だ。ジャマイカ人のジョージさん(49)を父に、日本人の景子さん(52)を母に持つ。昨年4月の織田記念国際では桐生を破って優勝。脚光を浴びたが、その後は左太もも裏の故障を繰り返した。失意の間に、新星サニブラウンが大活躍。その姿をテレビで見て「もう少しやれるのにな。悔しい思いはあった。けがが治らないでずっと続くのかなと不安があった」という。

 昨年9月から約2カ月、全く走らない期間をつくって回復に努めた。冬の間は前半に力んで肩が上がる悪癖を直すために、400メートルを走った。今春から社会人にもなって、心機一転。一気に五輪を視界に捉えた。

 180センチ、76・5キロ。広い肩幅、パワーが武器だ。米大リーグのダルビッシュも通う都内のジムでウエートトレーニングを行う。ジム内でアスリートたちを指導するドーム陸上部の大前GMは「彼は世界基準の体を持っている。ダルビッシュ選手クラスのアスリートです。9秒台に一番近い存在です」と期待を込める。

 9秒台まであと0秒11、距離に換算すれば約1メートルだ。ケンブリッジはゴール後に右腕を約1メートル伸ばして「(9秒台に)やっと届くところにきました」と笑った。最終選考会である日本選手権(6月、愛知)に向けて「ここまできたら9秒台を出して、優勝したい」と宣言した。【益田一弘】

 ◆ケンブリッジ飛鳥(あすか)1993年(平5)5月31日、ジャマイカ生まれ。2歳で大阪に移住。小学校はサッカーで中学校から陸上を始める。東京高、日大をへて今春からドームに入社。200メートルの自己記録は20秒62。家族は両親と妹。180センチ、76・5キロ。

 ◆男子100メートルの代表争い 枠は最大3。日本陸連の派遣設定記録(10秒01)突破者はなし。参加標準記録(10秒16)は高瀬、桐生、ケンブリッジ、山県の4人が突破しており、最終選考会となる日本選手権(6月、愛知)で優勝すれば、内定。残りは同選手権後の選考に委ねられる。なお高瀬は五輪で200メートルに専念する考えを示している。