ニューイヤー駅伝は来年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。実業団駅伝の特徴の1つに双子選手が多く登場することが挙げられる。コニカミノルタの設楽啓太とホンダの悠太(ともに24)は別チームから出場し、村山謙太と紘太(ともに23)は旭化成でタスキをつなぐ。旭化成には市田孝と宏(ともに24)もいて、2組の双子が出場する可能性もある。そしてコニカミノルタで何度も優勝メンバーとなった松宮隆行(愛知製鋼)と祐行(ともに36=セキノ興産)も健在。ともにプレーイングコーチという立場で対決することになる(いずれの選手も先に書いてある方が兄)。

 マラソンで五輪2大会にそろって代表となった宗茂・猛兄弟(旭化成)からの“伝統”とも言える日本長距離界の双子選手。ただ出場するだけでなく走力レベルも高い。今夏のリオ五輪には村山紘太が1万メートルと5000メートルに、設楽悠太が1万メートルに出場した。世界の壁は高く入賞することはできなかったが、若い2人は4年後の東京五輪に向けて貴重な経験を積んだ。

 リオの選手村で同室だった2人の間では「大学時代は兄貴が強かったけど、今年は弟が強い」という話題もあったという。双子全般に兄の方がわずかだが身体的な成長が早く、高校、大学時代は成績も先行するケースが多い。学生駅伝は啓太と謙太が、箱根をはじめとした駅伝のエース区間で活躍することが多かった。

 だが、実業団になると弟が追いつき、同レベルになった。村山兄弟は昨年の北京世界陸上には謙太が1万メートル、紘太が5000メートルで代表になり、11月には紘太が1万メートルで日本新をマークした。設楽兄弟も一昨年までは、1万メートルで直接対決をすると兄の啓太が勝っていた。

 今季はともに弟が勝っているが、紘太は「一番強いと思っているのは謙太」と言い、悠太も「一番強い長距離ランナーは啓太」と、アンケートに書いている。紘太は「リオの経験も謙太と共有することで、2人にとってプラスになっている」と、双子兄弟特有の相乗効果を強調した。

 今シーズンも兄の方が強かったのは旭化成の市田兄弟。兄の孝は1万メートルで日本選手権4位と、リオ五輪代表トリオに次ぐ順位でゴールした。不調のときでもレース出場を避けない姿勢が、地力の向上につながった。ニューイヤー駅伝では最長区間の4区(22キロ)を任されそうだ。

 設楽兄弟、村山兄弟、市田兄弟の3組の双子は、来年のロンドン世界陸上代表も狙う。

 一方、大ベテランの双子が今年もニューイヤー駅伝に出場する。松宮兄弟はコニカミノルタに在籍時に何度も同チームの優勝に貢献。兄の隆行は08年北京五輪に5000メートルと1万メートルで出場。5000メートルでは日本記録も作った。05年に隆行がマークした30キロの1時間28分0秒は現在でも日本記録だ。

 その2人は現在、プレーイングコーチという肩書きで、指導者の道も歩み始めている。隆行は「以前はチームの優勝のために走っていましたが、今はチームの成長を楽しみにして走っています」と話す。愛知製鋼に移籍1年目の前回は5区(15・8キロ)で5人抜きを見せ、チームの4年ぶりの10位台(13位)に貢献した。「9割は選手」(隆行)だが、児玉泰介監督らとともに練習メニューの作成に加わっている。

 弟の祐行の方が早くにプレーイングコーチとなった。ラインなどで連絡をするときに、選手としての調子などを報告し合っても、指導者としての課題や悩みについては話し合わない。そのあたりは言葉にしなくても、お互いに通じ合う部分があるのだろう。

 兄弟対決や、兄弟タスキリレーが実現するかもしれないニューイヤー駅伝。若手だけでなくベテラン双子兄弟の走りに注目して観戦するのも面白そうだ。

◆ニューイヤー駅伝にエントリーされたその他の主な双子選手

 ホンダの松村優樹と愛知製鋼の和樹(ともに23、優樹が兄)は浜松日体高(静岡)時代には2年連続で全国高校駅伝に出場。順大に進学すると3年時の箱根駅伝では優樹が1区、和樹が7区を、4年時には優樹が1区、和樹が9区を走っている。15年に社会人になると別々の会社に就職。ルーキーイヤーの今年のニューイヤー駅伝ではともに3区を走って“対決”。ホンダの優樹が区間10位、愛知製鋼の和樹は区間18位だった。

 JFEスチールの主将である大谷康太と、健太(ともに29、健太が兄)もエントリーされた。ともに出雲工-山梨学院大で活躍。社会人でも同じチームに入部した。今年のニューイヤー駅伝は健太のみが4区で出場。今年は双子の同時出場なるか。