陸上の日本選抜陸上和歌山大会が27、28日の2日間、改装された和歌山市紀三井寺公園競陸上競技場で開催される。8月のモスクワ世界陸上選考競技会を兼ねるグランプリ種目は、男女5種目が行われる。

 男子の十種競技、女子の七種競技と混成競技が行われるのが特徴の大会。昨年のロンドン五輪十種競技に、日本人選手としては48年ぶりの五輪出場を果たした右代啓祐(26=スズキ浜松AC)が自己の日本記録(8073点)更新に挑む。

 右代は「初戦の和歌山から8200点の世界陸上A標準を狙っていきます。それを目指す準備はできました」と意欲的だ。この冬は海外の試合や合宿に積極的に参加。走種目のスタート1歩目の動きや、投てき物に対する力の加え方など、新たな技術を身につけた。「和歌山は気候も良いし、スタンドの距離も近く感じられて競技をしやすいんです」

 “混成競技の和歌山”で新記録のアナウンスが聞かれるかもしれない。

 十種競技では中村明彦(22=スズキ浜松AC)も注目されている。昨年の日本選手権で7710点の自己新をマークしたが、ロンドン五輪標準記録に届かなかった。1週間後の日本選手権400メートル障害で2位となり、A標準も突破。専門外種目で五輪出場を果たした。

 今年も十種競技中心のスタイルは変わらない。右代がA標準突破に成功すれば、B標準(8000点)突破でも世界陸上代表入りが可能となる。

 196センチと長身の右代は投てきや棒高跳びなどパワー系種目を得意とする。それに対して中村は100メートル、400メートル、1500メートルのラン種目で他を圧倒する。対照的な2人が、交互に高得点の応酬をするところも今の十種競技の面白さだ。

 世界陸上標準記録(Bが2メートル28)突破は男子走り高跳びにも期待できる。昨年のロンドン五輪は代表を派遣できなかったが、2メートル23~25の高さを跳んでいる選手は多い。

 3年前の世界ジュニア選手権銅メダルの戸邊直人(21=筑波大)が期待の一番手だが、昨年の日本選手権を制した高張広海(25=日立ICT)も充実している。昨年、大学卒業5年目で急成長して日本リスト1位を占めた富山拓矢(28=鶴学園クラブ)、高専から筑波大に入学した衛藤昴(22)ら、経歴面で特徴ある選手も面白い存在。

 誰かが2m20台後半を跳べば、続く選手も現れて盛り上がりそうな雰囲気がある。

 男子円盤投は世界陸上B標準が64メートル00で手が届かないが、60メートル22の日本記録更新は期待できる。その記録は1979年にマークされ、五輪種目では最も古い日本記録として残っている。

 挑むのはベテランの畑山茂雄(36=ゼンリン)と若手の堤雄司(23=国士大院)。畑山は60メートル10の日本歴代2位を筆頭に58メートル50以上を8回投げ、アベレージでは歴代ナンバーワンの選手。対する堤は昨年の日本選手権で畑山を破り勢いがある。ベスト記録は57メートル74(日本歴代4位)だが、「日本記録更新はステップ。目指すのは世界大会の決勝」と言う強気の選手。

 34年間止まっている時計の針を進めたい。