<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇22日◇埼玉・熊谷スポーツ公園陸上競技場

 女子3段跳びは吉田文代(32=郡山女大付高教)が6回目に13メートル26を跳んで4年ぶり5回目の優勝を果たした。

 「4年ぶりの優勝なんだ?

 と思いましたが、全部の所属で最低1回は勝っているんです」。ニシスポーツ、秋田ゼロックスでは競技を優先できる環境だったが、2008年9月からは成田空港にフルタイムで勤務しながら競技を続けた。そして今年の4月からは教員と選手指導を優先しながら競技を続けている。それでも今年の日本選手権では9回目の優勝と、結果を出すことで若手を叱咤激励している。

 吉田の一番の目標は来年、福島で開催される日本選手権だ。「福島に来て数カ月ですが、原発事故の影響を間近で見られるようになりました。練習している郡山のグラウンドでは、除染した砂を埋めた上を走っているんです。測定器を置いてモニタリングしているから大丈夫なのですが、最初は生徒たちを走らせて本当に良いの?

 と思いました」。

 そんな状況を目の当たりにしたからだろう。今年の日本選手権で表彰されたとき、来年も表彰台の中央に立ちたいと強く思った。「スタンドに生徒たちがいて、名前を呼んでもらえたら最高でしょうね。希望を持つこと、夢を持つことの素晴らしさをわかってもらいたいと思っているんです」。

 160センチと小柄な部類に入る吉田が、フルタイム勤務の環境で日本のトップを32歳まで維持していること自体が驚異的なこと。今回はさらに、技術的にも新しいことにトライした。吉田の前向きな姿勢が被災地の希望の灯となる。