<陸上:日本選手権兼世界選手権代表選考会>◇第1日◇7日◇東京・味の素スタジアム◇男子100メートル予選

 日本人初の9秒台を狙う桐生祥秀(よしひで、17=京都・洛南高3年)が、予選2組を10秒28で1着通過した。走りきれば世界選手権(8月10日開幕、モスクワ)出場が決まる今日8日の決勝は、同種目で戦後初の高校生日本王者を狙う。

 きっちりと結果を出した。桐生は、先行する高瀬、塚原の五輪経験組にもペースを乱されなかった。40~50メートルの間でトップスピードに乗り、ラスト20メートルで抜いた。追い風0・9メートルで10秒28。初の日本選手権で、逆転の1着通過を決めた。

 「自分のレーンだけを見て走っていた。先に行かれても、100メートルの間で抜ければいい。それができた」

 国内最高峰の大会。「生半可な気持ちで挑むと負ける。甘いものじゃない」と腹をくくった。スタートの反応時間0秒193は9人の中で最下位も、トップでゴール。高校レベルでは敵なしだが、シニア相手では先行される状況も想定。洛南高では、仲間を前方に置いて同時にスタート。出遅れてもリズムを崩さない練習を積んできた。

 今日8日の決勝を走りきれば、世界切符が決まる。高校生が同種目で優勝すれば、戦後初のケースだ。最大のライバルは「憧れの存在」という予選1組1着の山県で「ベストで思い切り走れる時に勝負したい」と桐生。国内最強スプリンターをかけた激突で、9秒台突入の可能性もある。

 大舞台で負けない17歳は、世界選手権400メートルリレーメンバーも見えてきた。日本陸連の伊東短距離部長は「選ばれなかったら、皆さん(報道陣)に書かれるでしょ。何で(リレーに)使わないと」。日本歴代2位の10秒01を出した17歳を高く評価した。

 今大会翌日の10日には代表発表会見が予定される。桐生は学業もあるが、洛南高の岩崎副校長は「日本陸連から(会見出席の)要請があれば構いません」。早ければ、10日に日の丸のユニホームを着た「ジェット桐生」がお披露目になる。

 今日8日の決勝は大一番。「思い切ってスタートしたい。フライングを気にせず、自分の体を信じて。チャレンジャーとしてどれだけいけるか、やりたい」。戦後初の高校生日本王者の称号を手にして、世界に向かう。【益田一弘】

 ◆世界選手権の代表選考

 日本陸連が独自に決めた派遣設定記録を突破し、日本選手権で8位以内に入れば自動内定。国際陸連が設定した参加標準記録A突破者は、日本選手権で優勝すれば代表決定となる。男子ハンマー投げの室伏広治は前回優勝者として出場資格を有する。これ以外はA標準、またはB標準突破者の中から理事会で選考される。