日本男子が2連覇を飾った。決勝の相手は、今大会で金メダル2つと躍進した韓国。井上康生監督(37)が来年のリオデジャネイロ五輪を見据え、「何が何でもつぶせ」とハッパをかけた戦いに3-2で競り勝った。

 決勝直前、日本チームに熱いゲキが飛んだ。「勢いに乗らすな。今日見ても調子が良い。止めてこい! 何が何でもつぶしてこい!」。普段は温厚な指揮官が、あえて刺激的な言葉でまくし立てた。その姿に選手の表情は一瞬で変わった。国によってはトップ選手が出ない団体戦だが、決勝の意味合いはまったく違った。日韓対決は来年のブラジルでの決戦に向けて、重要な分水嶺(れい)になる戦いだった。

 初戦に登場したのは4連覇を逃した66キロ級の海老沼だった。相手は今大会で王者についた安バウル。「世界チャンピオンと戦えることをうれしく思います」。そう監督に告げると、「自分自身のために戦い、必ずや勝利をつかんでこい」と背中を押された。

 個人戦では3回戦敗退。「やり残したことがないように全部やって(日本に)帰ろう」。力の差を測るように序盤から背負い投げを連発した。「日本の一本柔道には近づかない。強くなっている」と感じながら、攻め手を緩めずに指導差で撃破。「ここで勝って良かった」と収穫を口にした。

 2-2で迎えた決勝も、団体戦要員だった王子谷と、11年大会銅メダルの金成民が熱戦を展開した。互いにがっちりと組み合い、汗をしたたらせながら勝機を探る。中盤で恐れずに大外刈りを仕掛けた王子谷が優勢に立ち、2-1の指導差で激戦を制した。

 井上監督が就任して3度目の世界選手権。ついに中量級以上(81、100キロ級)で金メダルをつかんだ。そして、団体戦では韓国の勢いを止めた。中央アジアでの決戦は、来年のブラジルへの光明となった。【阿部健吾】