【ウォリック(英国)6日=岡崎悠利】ラグビーW杯イングランド大会で歴史的3勝目に挑むエディー・ジャパンが、11日(日本時間12日)の米国戦に向けて本格的な練習を再開した。日本の連続攻撃「ジャパンウェイ」をリードするSO小野晃征(28=サントリー)は「4年間の成果を出す」と力強く宣言。南アフリカ戦、サモア戦の2試合に先発し、歴史的な勝利を演出したニュージーランド育ちの司令塔が、勝敗のカギを握りそうだ。

 どんよりと曇った中、米国戦に向けた本格的な準備が始まった。冒頭15分だけ公開された練習で、小野は時折、笑顔も見せながらダッシュやパスをこなした。その後、雨が降り出し、約2時間の練習が終わるとほどなくして豪雨に。髪をぬらして現れた日本の10番は「(8強へ)僕らがコントロールできるのは今週末の結果だけ。4年間の成果を出す」と語気を強めた。

 歴史的な3勝目が期待される。「(相手は)NO8とCTBが強いので、時間を与えない。攻撃でスペースにボールを運ぶのが僕の役割」と強調した。身長171センチ。今大会に参加するSOの中で最も小さい。それでもボールを持てば190センチを超える巨漢相手に勇猛果敢に立ち向かう。3日のサモア戦では相手守備の隙間を見つけては飛び込み、スペースにキックを蹴って味方を前進させた。引き続き米国戦でも、日本の攻撃をリードする。

 自らの強みを「どんな状況でも有利なところへ持っていける」と話す。走るか、蹴るか、パスか。ボールを持った瞬間に見極める力が際だつ。3歳から16年間をNZで過ごした。「NZでは自分と対戦相手だけじゃなく、いろんなチームのラグビーを見る。日本との違いはテレビゲームの時間もボールを追いかけていること」。小さい時から誰よりもラグビーを見て感じてきた。攻める、守るのタイミングを肌で知る。

 開幕前にはBK陣で食事に出かけ、07年大会のW杯経験者としての体験を伝えた。「道路が通行止めになってわずらわしい時があるとか、本当に細かい違いも」。どんな状況にあっても努めて冷静に対応する-。初戦の南アフリカ戦で見せた最後の連続攻撃は、土壇場の高揚した雰囲気の中でミスなく遂行された。

 07年W杯に20歳で出場したが1分け3敗。当時の映像は見ていない。だが今回は「自分からビデオを見たいと思うくらいの大会にしたい」と意気込む。8年という歳月で深めた自信は、W杯2勝で確信に変わった。

 ◆小野晃征(おの・こうせい)1987年(昭62)4月17日、名古屋市生まれ。ポジションはSO。3歳半から19歳までをニュージーランドで過ごし、6歳でラグビーを始める。クライストチャーチボーイズ高からサニックスを経てサントリー所属。W杯は07年大会に出場も11年大会は落選。ジョーンズHC就任後に代表復帰。家族はニュージーランド人の妻。代表キャップ数31。171センチ、83キロ。

 ◆07年W杯の日本代表VTR フランスを中心にウェールズ、スコットランドにまたがって共同開催。ジョン・カーワンに率いられた日本はターンオーバー制を採用し、リザーブ組で挑んだオーストラリアに3-91、ウェールズに18-72と大敗。レギュラー組で臨んだフィジーに31-35、カナダに12-12の引き分け。最終戦のドローで4大会ぶりに1次リーグ最下位を免れた。小野は、初戦のオーストラリア戦で日本の初得点となるPGを決めた。

 ◆スタンドオフ(SO)とは フォワード(FW)とバックス(BK)を結ぶ、ハーフバック(HB)の1人。10番を背負い、司令塔として攻撃の組み立ての中心となる。FWが密集で獲得したボールをスクラムハーフ(SH)が出した後、最初にボールを受ける位置におり、あらかじめサインで決めていたプレーを行うのが主な役割。ラグビーの花形ポジションとも言われる。