女子100メートルバタフライで池江璃花子(15=ルネサンス亀戸)が、初の五輪出場を決めた。200メートル自由形予選、準決勝に続く3本目のレースとなった決勝で57秒71で初優勝した。派遣標準記録(57秒77)を100分の6秒上回って「うぇ~ん」と大泣きした。3種目で日本記録を持つ「水の申し子」が伸び盛りの勢いそのままに、リオデジャネイロのスタート台に立つ。

 池江はお立ち台の上で「本当になんか、もう、とにかく…。うぇ~ん」と両手で顔を覆った。泣きやんでから、感想を聞かれても「派遣(標準記録)を切ることだけをずっと目標にやってきた。本当にうれしいです…。うぇ~ん」。リオ切符の喜びに大泣きした。

 涙は15歳らしくても水の中では別人だ。200メートル自由形準決勝を泳いでから約40分後。3レース目でも前半から飛ばした。後半の失速を我慢した。「派遣を切れてないんじゃないかと。場内アナウンスで分かった。それで泣いちゃった」。

 今大会は4種目にエントリー。1日で3レースのこの日が最大のヤマ場だった。「(1日で)2種目に出るのは葛藤があった。大会前までずっと悩んだ」。昨年日本選手権は日本ランク1位で出場も余力を残しすぎて予選20位と惨敗している。それでも「出ることに意味がある」と挑戦した。

 「水の申し子」だ。母美由紀さん(50)は「家の風呂で産んだんですよ」と明かした。体温に近いお湯の中で分娩(ぶんべん)する方法。助産師を呼んで自宅で産んだ。「赤ちゃんにとってどうか。(水中出産は)一番出やすい。子どものためになることしかしたくない」と振り返った。

 母は運動神経を発達させるため、生後半年で指につかまる感覚を覚えさせ、自宅に雲梯(うんてい)も設置した。中学3年間で身長は15センチ伸びて170センチ。しかも水を捉えるために重要なリーチは、身長を上回る184センチだ。これまで中学記録、日本記録など「記録」がつくものを通算40回以上も更新している。泳ぐたびに記録を伸ばしてきた。

 池江はイメージトレーニングを欠かさない。この日は優勝インタビューされる自分を想像してレースに臨んだという。ただ「あんなに涙が出てくるとは思わなくて。死ぬほどうれしい」と照れ笑い。残り3種目でも五輪を目指す高校1年生は本番でもビッグサプライズを起こす可能性がある。【益田一弘】

 ◆競泳の年少五輪代表 最年少は、80年モスクワ大会女子平泳ぎの長崎宏子。開幕時11歳だったが、日本がボイコットしたため幻の代表になった。出場した最年少は、92年バルセロナ大会女子背泳ぎの稲田法子で14歳。金メダルに輝いた平泳ぎの岩崎恭子より6日若かった。最近は平均年齢も上がり、中学生は96年アトランタ大会女子バタフライの青山綾里が最後。前回ロンドン大会は渡部香生子が高校1年の15歳で最年少だった。

<池江璃花子(いけえ・りかこ)アラカルト>

 ★生まれ 2000年(平12)7月14日、東京都生まれ。兄と姉の影響で3歳10カ月から水泳を始める。4月から淑徳巣鴨高に進学した。

 ★抜群の運動神経 幼児教室の代表を務める母美由紀さんが脳の発達のために雲梯(うんてい)に取り組ませた。1歳半で逆上がりをマスター。

 ★中学生代表 昨夏の世界選手権は、中学生として14年ぶりに代表入り。400メートルリレーと800メートルリレーでリオ五輪出場枠獲得に貢献。50メートル自由形、100メートル自由形、200メートル自由形、50メートルバタフライ、100メートルバタフライで中学記録樹立。

 ★夢 東京五輪金メダル。足のサイズは26・5センチで男性用を主に履く。170センチ、54キロ。