女子65キロ級は、伊藤彩香(25=東進住建)が、栄和人氏の娘、希和(ジェイテクト)を破り、優勝した。序盤から攻めてくる相手をかわし、得点を重ねる第1ピリオド(P)で4-2とリード。第2Pは押され気味だったが、試合終了直前にタックルで倒して突き放した。

 10月の世界選手権代表入りへは、全日本選手権と今大会を勝つことが条件だった。ただ、伊藤は全日本選手権に出場しておらず、7月7日の代表決定戦(埼玉)に進むには勝つしかなかった。「攻めてくるのは分かっていた。押されつつ抑えてやろうと思っていた。勝たないと世界選手権はなかったので勝ててうれしい」と安堵(あんど)の表情を見せた。

 大けがを乗り越え、世界でリベンジに燃える。昨年の世界選手権代表に決まっていたが、直前に左足アキレス腱(けん)を断裂し、辞退した。悔しさにまみれたが、大会を見ながら「自分ならどうするかとか考えた」と話すように、競技が頭から離れることはなかった。その後は、懸命のリハビリの末、マットに戻ってきた。今でも全力で走り続けると痛みが出るが、「どこまでやれば痛みがでるか分かってきた」とケガとの付き合い方も身につけた。

 背中を押してくれる人がいた。大の阪神ファンで16年7月、西岡剛選手が試合中にアキレス腱(けん)を断裂した試合を生で観戦していた。その後、自身も同じケガ負っただけに、その西岡が1年ぶりに復帰した時は「すごく励みになった」と力をもらい、復活につなげた。

 過去、世界大会には11年から11度出場し、9個のメダルを取ったが、世界選手権のメダルはない。7月7日の代表決定戦まで約1カ月。「前回は優勝したいと思って出られず落ち込んだ。プレーオフまでに力をつけて(世界選手権に)出場したい」と不退転の決意を誓った。