柔道界の恥部がまた発覚した。バルセロナ五輪銀メダルの溝口紀子さん(41)が23日、都内でのシンポジウムで衝撃的な事実を公表した。全日本柔道連盟(全柔連)の現職理事が、現役女子選手にわいせつ行為を行ったとして、同選手から相談を受けた溝口さんが経緯を説明した。助成金不正受給問題など、柔道界は不祥事が相次いでいる。新たな騒動が表面化し、柔道界を見る世間の目がさらに厳しくなることは避けられない。

 わいせつ行為があったのは11年12月。被害を訴えている選手の代理人となった境田正樹弁護士によると選手は30代、理事は70代。

 ある大会後の打ち上げの宴会に参加した帰路、都内地下鉄エレベーターで2人きりになった際、無理やり抱きついたり、キスを迫ったりし、選手は直後に駅の女子トイレに逃げ込み、友人に電話し一緒に交番へ。だが、その場では相手への聞き取りはされなかった。

 溝口氏は「理事はお酒が入っていた。性的関係を迫られたと感じてもおかしくない行為。選手は強化指定ではないが、全国大会に出るレベル。相手は当時も現在も理事」と明かした。

 理事からは年明けの12年1月、擦れ違いざまに同選手に対して「悪かったな」と謝罪の言葉があった。選手はその後も別の理事に相談したが、公式な謝罪もなく、不問に付された格好となっていた。大会会場などで顔を会わせることもあり、同選手はいまも精神科に通院している。

 柔道界では1月に女子日本代表での暴力指導が問題となり、再発防止策を議論する「暴力の根絶プロジェクト」が4月に始動した。これを機に同選手が、プロジェクトメンバーであるソウル五輪銅メダルの北田典子氏に相談。溝口氏は北田氏から連絡を受け、13日に同選手と連絡を取り事件の詳細を知ったという。

 柔道界では、教え子に乱暴したとして五輪連覇の内柴正人被告が、準強姦(ごうかん)に問われる醜聞が問題になったばかり。今回は現職理事が関わったとされ、再び柔道界のモラル低下が叫ばれそうだ。

 境田弁護士は「行為は強制わいせつにあたる」として、理事の辞任を求めていく方針。「まずは選手が所属する(全柔連の)傘下団体に告発するか検討する。選手は不安な状態が続いており、どうするか詰めていきたい」と話した。【阿部健吾】