今季限りでの現役引退を表明しているフィギュアスケート女子の浅田真央(22=中京大)が、14年ソチ五輪での金メダル獲得へ、「勝負プログラム」を解禁した。24日、地元の名古屋で開催されたショー「ザ・アイス」で、今季のショートプログラム(SP)とエキシビションを初披露。06-07年と同じ「ノクターン」で滑るSPではジャンプでミスが出たが、コーチも舌を巻く「過去最高難度」の演技となる。

 7年ぶりに氷上に流れるショパン作曲「ノクターン」の調べ。高校1年だった浅田は22歳になった。そして再び-。2度目の五輪で頂点に立つための、2度目の「ノクターン」だ。

 「大人っぽく、いろいろな表現ができるようになっている」。進歩を話していたとおり、2分49秒の演技に7年間の成長を刻んだ。

 「今季のSPを初披露です!」。アナウンスが会場に響くと、「おおー」と「ヒュー」、驚きと期待に1500人以上の観客のボルテージが上がる。ライトが照らし、浅田がピンクと紫に彩られた衣装で立つ。

 ゆったりと曲が流れて冒頭、代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶように、ラインを描く。7年前はルール上、単発では2回転半までしか許可されなかった。この日は1回転半になったが、今季は初戦から大技を組み込む宣言をしている。続く連続ジャンプは3回転フリップが乱れ、2本目は跳べず。そこからスピン、そして3回転ループ。手をつくミスが出た。終盤はステップから、最後はビールマンスピン。右手を伸ばし、少し視線を上げて、曲は終わりを告げた。

 10年バンクーバー五輪後から指導する佐藤久美子コーチは、フリーも含めて「よくこんな難しいことをするなと思います。初めて見たときは驚きました」とその構成に舌を巻く。浅田史上でも、最高難度。間断なく、複雑なステップ、上半身の動きが続く。スケート技術、つなぎ、振り付けなどを評価する芸術要素でも高得点が期待できる。

 ミスは出たが、この日のリンクは試合用より小ぶり。大きく滑れないため、直前まで挑戦を迷っていた。そして、シーズンインはまだ先だ。トークショーでは「日々の練習で(出場)切符を取って、最高の演技で五輪が終われるように頑張りたい」と笑顔もみせた。

 フィナーレで着た珍しい法被姿の背中には「勝」の印。最も難しい演技を滑りきった先に、その文字が見えてくる。【阿部健吾】