<ラグビー・関西大学リーグ:京産大36-33摂南大>◇25日◇京都・宝ヶ池

 涙の1勝だ。昨季2位の京産大が劇的な“サヨナラ勝ち”で今季3戦目にして初白星を挙げた。後半ロスタイムに途中出場のFB猿渡一起(1年)が逆転のトライを決め、36-33で摂南大を下した。難産の末の初勝利に大西健監督(58)と選手はうれし涙を流した。24年連続の大学選手権出場へ、ようやく第1歩を踏み出した。

 分かっていても、まぶたの震えが止まらない。後半ロスタイム、最後のプレーでFB猿渡がゴール左に飛び込むと、京産大フィフティーンは涙で目を赤く染めて抱き合った。起死回生の逆転トライ。23年連続で大学選手権出場中の強豪が今季初勝利に涙した。就任36年目の大西監督も「恥ずかしながら、大学選手権で勝った時よりうれしい」と目頭を押さえた。

 指揮官自らが発掘した1年生が開幕3連敗目前の窮地を救った。「ウチに来たら伸びる」。184センチの長身に目を付け、ほぼ無名の京都・向陽高から誘ったのが猿渡。投入直後にはトライ後のキックをポールに当てて同点を逃す痛恨のミスを犯したが、最後の最後で帳消しにした。殊勲のルーキーは「京産には伝統がある。もう負けられなかった」と白い歯を見せた。

 前節は過去30シーズン負けなしだった関学大に0-66の屈辱的大敗。大西監督は「次負けたら終わりや」と言い、3日連続で紅白戦を行った。闘争心を呼び起こし、能力差を気迫で補う「京産イズム」をあらためて植え付けた。この日は先発4人を入れ替え、トンガ出身2人を擁する摂南大に伝統のスクラムで押し勝った。

 まだ1勝2敗。「絶対に(優勝の)夢は捨てない」。名将は涙にぬれたハンカチをポケットに押し込んだ。【太田尚樹】