佐渡ケ嶽部屋が中止を決めたオランダ公演(6月5、6日)をめぐり、オランダ政府側が、中止を助言した日本相撲協会に猛反発していることが27日、分かった。協会側が中止を助言した理由は表向きは「新型インフルエンザ」予防だが、実際は大麻の所持、使用に寛容なオランダの事情を考慮してのこと。同政府側は、協会側がいったんは公演を許可していたことも取り上げ、日本政府にも不満を訴えている。事態は国際問題の様相を呈してきた。

 佐渡ケ嶽部屋によるオランダ公演中止の判断が、思わぬ波紋を呼んだ。主催の在蘭(オランダ)日本商工会議所(JCC)関係者は「がく然としました。公演準備には約7000人の在留日本人がかかわっています。オランダ人もどんなに楽しみにしていたことか」という。日本の同公演準備事務局は「実現したい。公演は(オランダ)王室も観戦します。ドイツから土を運び土俵を作る準備もしている。(日本の)外務省にも強くはたらきかけています」と明言した。

 6月5、6日に予定されていた公演は、約2年前から「オランダ日本の国交400年記念」の目玉行事として企画され、力士、行司、呼び出し、床山とそろった同部屋による無償奉仕が内定した。同事務局によると、日本相撲協会の北の湖前理事長に続き、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も今年1月にオランダ大使館員と面会し、開催を了承。しかし、今月22日になって、佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は公演を中止する方針を打ち出した。

 背景には武蔵川理事長の「今の時期、行かない方がいい」という助言があった。同親方は「新型インフルエンザのこともあるので」と話したが、協会関係者によると、理事長や協会幹部はオランダが大麻の所持、使用に寛容という事情の方を問題視。同親方に「責任を取れるのか。名古屋場所まで影響が出るぞ」と忠告したという。

 同親方は23日には在日オランダ大使館に出向いて公演中止に理解を求めたが、オランダ政府側は納得せず、26日には同大使館員が同協会に出向き、武蔵川理事長らに再考を要望した。既に2日間で約7400枚のチケットがさばかれ、会場、ホテル、航空券のキャンセル代を合計すれば「損失は数千万円」(同事務局)。JCC関係者も「オランダが大麻に寛容なのは有名な話で、2週間前になってのキャンセルは非常識。新型インフルエンザが理由でも1カ月前には対応できたはずです」と訴えた。

 JCCは27日中に結論を出す予定だったが、事務局側が「もう1日待ってほしい」とし、最終決定を28日に延ばすことを決めた。武蔵川理事長は「(中止)要請ではなく、助言したまで」としているが、板挟みになった佐渡ケ嶽親方はこの日「オランダの方々にご迷惑をお掛けしてますが、理事長からも助言をいただきましたし、協会にも迷惑をかけられないので…」と苦渋の表情を浮かべていた。