大相撲の元横綱朝青龍関(30)が、12年夏に行われる母国総選挙のモンゴル国民大会議(国会、定数76)出馬に向け、本格的な準備に入ったことが26日、分かった。元朝青龍関に近い関係者が明かしたもので、すでにタミル元夫人や2人の子どもと首都ウランバートル市内で生活。22日には都内のマンションから荷物をすべて運び出し、97年9月の初来日以来、13年間生活の拠点だった日本を電撃的に去った。第1党のモンゴル人民革命党からの出馬が有力で、地盤固めに動く。

 つい半年前には「自分は多分、ずっと日本に住むと思う」と話していた元朝青龍関が急転、日本を去っていた。都内のマンションは11月末まで契約が残るが、22日にはタミル元夫人立ち会いの下、荷物が運び出され、引き払われることになった。

 師匠の高砂親方(元大関朝潮)も「何も聞いていない」というほど、極秘裏に進められた。4年に1度の総選挙に向け、生活拠点をウランバートルに移したとみられ、関係者は「12年の選挙は、間違いなく出るでしょう」と明かした。

 元力士では08年6月の前回モンゴル国民大会議で、元小結旭鷲山のバトバヤル氏が当選している。同氏はモンゴル人力士のパイオニアとして、06年11月の九州場所中に引退届を提出するまで現役を続けた。選挙は引退から約1年半後とあって、現役時代の人気を残したままの当選だった。

 関係者は「朝青龍も同様に、直前まで現役を続けたかったのでは」と明かした。10月3日の引退相撲を告知するホームページでは「あと2年、相撲をやりたかった」と本音を語っている。あと2年続けていれば、ちょうど12年夏の総選挙へ弾みがついていた。

 すでに政治家に向けた活動も開始している。今年4月には政府の関係者に同行し、北朝鮮を訪問した。引退相撲では、バトボルド首相を招いている。近年は、同首相が属する第1党のモンゴル人民革命党幹部と親しく、同党からの出馬が有力だ。

 再婚はしていないものの、タミル元夫人らと暮らすウランバートルは出身地の上、元朝青龍関は都市部での人気が根強い。それだけに、関係者は「出馬となればウランバートル内の選挙区は有力候補」という。現役時代から何かと対立していたバトバヤル氏は、第2党の民主党所属だが、前回当選したウランバートルを離れる可能性が高い。同氏に投じられていた票集めを含めて、今後は拠点を移し本格的な活動に入る。