阪神で先発ピッチャーに勝ちがつかない“ドミノ現象”を食い止めたのは、新人伊藤将の好投だった。

権藤 伊藤と松葉両サウスポーのがっぷり四つだったね。こういう展開になると、四球か、エラーか、ホームランかで勝負が決まるという古くからの言い伝えがあるが、やはりその通りだった。どちらも失策絡みでゲームが動いたわけだが、伊藤の投球は最後まで中日打線をてこずらせた。

伊藤将は7回を88球で乗り切ると、8回岩崎、9回スアレスにつなぐ理想的な勝ちパターンで逃げ切りに成功した。

権藤 特にストレートとカットボールの見分けがつかなかった。打者からすると真っすぐかなと思ったらカットボール、スライダーでボールが動くし、それが低めに決まった。先発が崩れてきたといっても素材はそろっているわけで、もともと阪神は弱くない。4連敗していたから開き直りの1勝だったが、首位の座を譲ったといっても、差がついたうちには入らない。勝負はこれからです。

一時は最大8ゲーム差をつけていた巨人に追い抜かれ、ヤクルトも含めての三つどもえになった。

権藤 巨人に抜かれたといっても極端に貯金を減らして下がったわけではない。一番苦しい戦いをしてきているのは巨人だが、さすがしぶとく食い下がって、下位をみる必要がなくなったヤクルトが上がってきた。完璧に3チームが輪の中に入った。2強なら1チームが脱落することはあるが、三つどもえになるとなかなか1チームだけが抜け出すのは難しい。ここからは勝つというより、簡単に負けないこと。要するに大きな連敗をしない。我慢比べだ。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対中日 試合後、ファンにあいさつする阪神伊藤将(撮影・清水貴仁)
阪神対中日 試合後、ファンにあいさつする阪神伊藤将(撮影・清水貴仁)