巨人にとって「まさか」の展開だったと思う。3点をリードされた9回裏2死二、三塁、来日してここまでホームランのなかったモンテスが同点3ラン。土壇場で追いつきながら、延長10回に1点を勝ち越され、手痛い1敗を喫してしまった。

ちょっとした気の緩みが出た。延長10回表、ストッパーの大勢をマウンドに送り込みながら1死三塁のピンチを迎えた。この絶体絶命のピンチで左の武岡を空振り三振。打席は守備固めに入っていた並木で、今季1本もヒットを打っていないバッターだった。

外角低めに狙った直球がボールになった。この時の球速が151キロ。前の武岡に投げていた真っすぐはMAX159キロ。常時150キロ台後半をマークしていただけにコントロール重視に切り替えていた。ここで最悪なのは打率0割の打者への四球になる。しかし打者の並木からすれば「絶対に自分で勝負してくる」と考える。球種の少ない大勢なら、100%の確率で真っすぐを狙う。置きにくる真っすぐを続ければ「もしかしたら…」という予感通り、並木は真ん中低めの152キロの真っすぐをセンター前にはじき返した。

大勢にしてみれば、悔いが残る1球だっただろう。次の打者は左の西川で、もちろん、並木で勝負するのは間違いではない。しかし細かいコントロールで勝負するタイプではない。自分の持ち味でもある力のある真っすぐをど真ん中にめがけて投げるべきだった。

ヤクルトにしてみれば、最下位チームとは思えない、執念のこもった試合だった。6回1死一塁、サンタナのセンターオーバーに対し、村上が好走塁で先制のホームに滑り込んだ。フルカウントからの一打に投球と同時にスタートを切り、二塁ベース手前で打球を判断して再スタート。本来、アウトになる可能性が少しでもあれば三塁でストップさせなければいけない。しかし三塁コーチもタイミングよくスタートした村上の走りにかけたのだと思う。先制点に結び付いた。

7回表2死三塁からの長岡のタイムリーは見事だった。左の変則投手の高梨だけに、明らかに逆方向への軽打を狙っていた。甘かったとはいえ、初球のシュートを狙い通りに仕留め、三遊間にはじき返した。的確な判断で打球方向を決め、持ち前のミート力の精度を上げたことが結果につながった。

並木の勝ち越し打にしても、村上の走塁にしても、長岡のタイムリーにしても、ちょっとした状況判断がいいプレーにつながっている。こうしたプレーの積み重ねがあれば、最下位脱出の可能性はある。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ヤクルト 10回表ヤクルト2死三塁、並木に勝ち越し適時打を許し肩を落とす大勢(撮影・藤尾明華)
巨人対ヤクルト 10回表ヤクルト2死三塁、並木に勝ち越し適時打を許し肩を落とす大勢(撮影・藤尾明華)
巨人対ヤクルト 10回表ヤクルト2死三塁、大勢は並木(後方左)に適時打を許し首をひねる(撮影・西尾就之)
巨人対ヤクルト 10回表ヤクルト2死三塁、大勢は並木(後方左)に適時打を許し首をひねる(撮影・西尾就之)