開幕前のセ、パの優勝候補が、交流戦の最終カードで対戦した。開幕からけが人が続出して苦戦しているソフトバンクだが、交流戦では首位に立ち、巻き返している。一方の阪神は交流戦で7連敗して苦戦しているが、いまだにセ・リーグの首位は明け渡していない。両チームが踏ん張り続けていられるのも、今試合で先発したモイネロ、村上の両エースの隙のないピッチングがあるからだと、改めて感じさせられた。

両投手ともに言えるのは、単純に投げる球の素晴らしさだけでなく、“クレバーさ”を持ち合わせているという点だ。まずはモイネロだが、毎回走者を出していた。4回までのクイックのタイムは速くても1秒3前後で、俊足の走者ならば盗塁できるモーションだった。5回裏、先頭打者の近本がレフト前ヒットで出塁。2番の中野の犠打数はセ・リーグで断トツの22個。手堅く送るのか、クイックに隙のあるモイネロを相手に盗塁を仕掛けていくか、注目していた。

阪神ベンチも、近本も盗塁を仕掛けられると考えたのだろう。中野も送りバントの構えをしていなかった。そんな中、中野への初球のクイックは1秒17。中野は5球目で打って三塁線を破るヒットを放ったが、盗塁を仕掛ける隙はなかった。一、二塁になってからは、ここまで二塁走者の方を2度見た時はホームに投げていたが、森下の初球には3度、二塁走者を見てから投げていた。これだと、走者は三盗を狙えなくなる。それを見越したように、その後は1度だけ走者を見てからの投球に変え、打者との勝負に集中していた。

一方の村上も負けてはいない。7回2死二塁、海野に対し、カウント2-2から低めのチェンジアップがワンバウンドし、暴投で走者は三塁に進んだ。ここで、またチェンジアップを投げるのは勇気がいる。再び暴投になれば点を失うし、フルカウントから歩かせれば、次打者のモイネロには代打が出ただろう。打率1割台の海野で確実に終えたいところで、村上は落ち着いて低めへのチェンジアップを続け、三振でピンチを切り抜けた。

長いペナントを戦う上で、チーム状態はいいときと悪いときが必ず訪れる。しかし、モイネロや村上のような投手がいれば、チームも耐えていける。2人に勝ち負けは付かなかったが、村上が7勝2敗でモイネロが6勝0敗。存在の大きさを改めて感じさせた。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ソフトバンク 7回、好投を見せる阪神村上(撮影・藤尾明華)
阪神対ソフトバンク 7回、好投を見せる阪神村上(撮影・藤尾明華)