日本ハム石川亮捕手(22)が12日、2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷の室内練習場で打ち込んでいた。開幕1軍メンバー入りへ向けた争いも佳境を迎えている。「ちょっと打ちたかったので」と、翌13日からの広島2連戦(マツダ)へ向けて休日返上の練習だった。

 高校野球の名門、帝京からドラフト8位で入団して5年目。入団当初はプロゴルファー石川遼と同じ読みで、球界の「いしかわ・りょう」として話題にもなった。1年目から1軍を経験し、2年目には27試合に出場。着実にステップアップしながら、3年目は1試合出場にとどまり、昨季はプロ入り後初めて1軍出場なしに終わった。昨年6月に右肩を痛めたことが要因。2軍戦でも打席に立つことは出来たが、守れなかった。「半年間、まともに野球が出来なかった」。

 ベンチから戦況を見守ることが多かった。何も出来ないもどかしさを抱えたが、野球の試合を俯瞰(ふかん)して見続けることで、今まで見えなかったことも見えてきたという。「捕手が出塁すると、けっこう試合の流れが変わるんですよね」。

 自身の復帰後をイメージして、打撃のスタンスを改めた。持ち味として自負していたファーストストライクから積極的に振る姿勢は見直すことにした。「初球で凡退することも多くて、それでは流れを切ってしまう」と感じたからだ。打者として自分に求められる役割は何か。「僕は下位を打つことが多い。簡単に初球から凡退すれば、捕手目線で考えると怖くない。逆に嫌なのは、出塁率が高い打者。下位が出塁すれば上位打線に回ってチャンスは広がる。そのために、どういうフォームにするべきか、考えました」。

 インパクト時に体が前に突っ込む癖があった。これでは、ボールを長く見ることは出来ない。凡打の確率は高まり、四球を選ぶ確率は下がる。体が前に行かないよう、右足でしっかりタメを作ること意識。そのために左足で軽くステップする動作を入れた。地面を蹴ることで、右足に体重が乗るようにするためだ。左足の動作はリズムで言えば「タンタン」と2度、ステップを踏む形。2弾モーションの打撃版のようなスタイルだ。

 新フォームは手応えをつかみつつある。2月の米アリゾナキャンプ中の実戦では3試合で5個の四球を選んだ。途中出場した3月4日ロッテ戦(札幌ドーム)では6点を追う7回先頭で中前打。8番打者としてチャンスメークした安打を起点にチームは2点を返した。8回にも中前適時打。目指す打者像へ確実に近づいている。

 今季、日本ハム捕手陣は実力が拮抗(きっこう)している。正捕手候補は3年目の清水。ソフトバンクからFAで復帰した鶴岡や、実績のある市川や黒羽根も控える。レギュラーへの道は険しいが、「自分のやれることを、しっかりやっていく」と前を向く。話題の選手が多い日本ハムだが、右肩痛を転機に進化を目指す石川亮にも、注目したい。【日本ハム担当 木下大輔】