球界でスーパースターの看板を張り続けた指揮官にとっても驚きだった。サッカーJ1ヴィッセル神戸に加入するスペイン代表の至宝、MFイニエスタの話題を巨人高橋監督に振った。

 「年俸32億5000万円はすごいですよね」

 「複数年の合計金額だろう?」

 「いや約33億円×3年です。つまり、ほぼ100億円の契約です」

 「え! そうなの…」

 メジャーに行けば日本が誇る至宝、ダルビッシュ、田中も匹敵する年俸を手にしている。だが国内プロ野球の史上最高年俸は佐々木主浩の6億5000万円。04~05年当時だから10年以上も前の話となる。レジェンドとして広島に“里帰り”した黒田も16年オフに交わした6億円だ。

 プロ野球とメジャーのマーケット価値が違うと言えばそれまで。だがイニエスタを獲得した神戸オーナーはプロ野球楽天のオーナーでもある三木谷浩史氏だ。

 日本プロスポーツのある一定の経済観念が破壊され、新たな価値観が生まれたのは歓迎すべきことだろう。お金がすべてではないが、国内で歴史に残る年俸を稼ごうと新しい夢をみられるアスリートが出てくるかもしれない。もちろん既存のパフォーマンスを超えた成績を残さなければ不可能だろう。その瞬間を目撃することは、取り巻く人にとっても至福だ。

 イニエスタが日本に来るのは、メジャーで例えるなら誰だろう? 記者仲間で妄想にふける。サッカーの司令塔タイプは野球に置き換えるなら好打者の二遊間の選手か。昨季世界一のアストロズ・アルテューベでは、イニエスタより脂が乗っている28歳。仮にヤンキースのレジェンド、ジーターが現役最終年を1年延長して日本に来ても41歳シーズン。今回のW杯ロシア大会にも出場する34歳のイニエスタよりはピークが過ぎているし…。

 不毛なトークを重ねる中で高橋監督にも「もし何十億円を使えたら、メジャーからほしい選手はいますか?」と聞いた。

 「う~ん。メジャーの選手にあまり詳しくないし、分かんないよ」

 日々、現実と戦う指揮官には意味のない質問だったことは、十分に理解しているつもりです。(金額はすべて推定)【巨人担当 広重竜太郎】