実にふてぶてしかった。もちろん、いい意味で。

6月26日も中日打線を相手にゲームセットまであと1人。打ち取った当たりが内野安打になっても、顔色ひとつ変えないではないか。

開幕投手の開幕戦から2試合連続完投勝利は98年の日本ハム岩本勉以来、実に22年ぶりだという。広島大瀬良は少なくとも表向きは余裕の表情をキープしたまま、この日も1人で勝敗に白黒つけた。

頑固だ。もちろん、いい意味で。

どれだけ先発、中継ぎ、抑えの分業制に時代が移行しようとも、意固地なまでに先発完投を目指す。昨季の6完投は両リーグ断トツの数字だ。

「もう、そんな時代ではないのは分かっていますけどね。でも今だって、何球投げてもいいから1試合を任せてもらいたい、という感覚を持っていますよ」

はやり廃りに流れされず、ブレずに理想像を貫き通すなんて、なかなかできることではない。

野球人としては古風なタイプなのだろう。もちろん、いい意味で。

長崎、鹿児島の野球少年時代は巨人ファン。先発投手の在り方を教わったのは、2人のレジェンドだった。広島黒田博樹と巨人上原浩治のエース対決には毎度胸を躍らされたという。

「勝っても負けても白黒つける。何球投げようが、当たり前のように1試合を投げ抜く姿が、本当に格好良かったんですよね」

原点がその2人であれば、今の大瀬良の立ち振る舞いに違和感はない。

いつだって泥臭い。もちろん、いい意味で。

「投手だから」と言い訳せず、9番打者としてもボールに食らいつく。開幕戦でプロ初本塁打を放ち、26日の中日戦でも2試合連続マルチ安打を記録した。

打って、走って、9回を投げきってしまう。

分業制が定着した時代において、本当に希少価値の高い投手だ。これはもう誤解されるはずがないが、もちろん、いい意味で。

誰の目にも分かるヒーローは、やっぱりワクワクする。役割分担がはっきりしがちな昨今だけど…。かつての大瀬良少年がそうであったように、令和の少年たちもまずは恥ずかしがらず、堂々と浪漫を追いかけてほしい。【遊軍=佐井陽介】