「好事魔多し」と言う。

西武は救援陣の踏ん張りが目を見張る。4点以上取った試合は9勝0敗。1度、主導権を握れば、もう相手に渡さない。終盤に崩れひっくり返された試合はまだない。そのリリーフ陣に漂う雰囲気を伝えるべく、防御率0・79の水上由伸投手(23)、防御率1・54の宮川哲投手(26)を中心とした話を書き終えようとした、ちょうどその時である。メールが届いた。2人が新型コロナウイルスに感染したとの発表だった。

リュックに宮川哲の缶バッジを複数つけている西武水上(撮影・浅見桂子)
リュックに宮川哲の缶バッジを複数つけている西武水上(撮影・浅見桂子)

記事にするタイミングとしてはどうなのか? 悩んだが、感染対策を施しても、かかってしまうものである。ブルペンの活気がしぼむことのないように-。そんな思いを込めて、ボツとせず紹介したい。

プロ初勝利を挙げた20日。水上はブルペンの雰囲気について言った。

「誰がいっても大丈夫という感じがあります。(互いに)負けたくないなという気持ちもあります」

結束を象徴するように、リリーフ陣の中で、ある“ブーム”が巻き起こっている。宮川の缶バッジ。水上だけでなく平井、増田ら、いろんな投手がリュックに付けている。

西武水上がリュックにつけた宮川哲の缶バッジ
西武水上がリュックにつけた宮川哲の缶バッジ

火付け役でもある水上は笑った。少しいたずらっぽく続けた。

「哲さんかわいいので、集めてます。ちょっといじりがいもあるので」。

ブーム到来の過程には、みんなから「ヒトシ」のニックネームで愛されている男が絡む。いや…誰? と思われる方もおろうが、ボー・タカハシ投手(25)である。実は「ヒトシ」のミドルネームを持ち、「ボー」よりもなじみがよく、そう呼ばれている。

その日系3世ブラジル人の新助っ人が「髪形がたわしみたい」と宮川を“いじり”、周りは大ウケ。そんな流れと、缶バッジのイラストが「かわいかった」こともあって、水上がリュックにつけた。そこから、マネするように広がった。

髪形が「たわしみたい」でかわいい?西武宮川哲
髪形が「たわしみたい」でかわいい?西武宮川哲

そして当の宮川も言っていた。

「何なんですかね~。いじりも感じますけど、みんなが喜んでくれているというか楽しんでくれているのでいいと思います」

中継ぎは時に緊迫するピンチの場面でマウンドを託され、時に抑えて当たり前という雰囲気の中でも投げる。その重圧はすさまじい。何ともきつい役回りを担う。ただ、そこに生きる男たちは明るく、活気に満ちていた。

貴重な左腕として登板を重ねていた佐々木も新型コロナで離脱する。楽天、ソフトバンクが抜け出しつつあるパの構図。3人が抜けた穴は決して小さくないが、食らいつくためには嘆いてもいられない。明るいムードは持続させていきたい。真価が問われる敵地の6連戦になる。【上田悠太】