2年連続2度目のゴールデングラブ賞を獲得した阪神近本光司外野手(28)は、屋内球場でもサングラスをかける時がある。

一般的には、デーゲームの日差しを避けるために使用するイメージが強い。なぜ、屋内で使用するのか。 近本が用品契約を結ぶサングラスメーカー「SWANS」を製造する山本光学株式会社の近本担当、羽田野雄太さんによると、近年各球場で導入されているLEDライトへの対策だという。

「特に、東京ドームのLEDはまぶしく感じていたそうです」

昨年8月のこと。それまで使用していた光を通す透明レンズから、薄めの青色のレンズに変更した。大自然の中で白球を追うゴルフ用のサングラスを改良したもの。LEDライトをシャットアウトした上でくっきりとボールが見える特別仕様だ。守備時のストレスが軽減されたことは、近本の好守備が証明している。

裸眼でも十分視力のいい近本だが、このサングラスには、わずかに度が入っている。「インパクトの瞬間が、はっきりと見えるようになったそうです」。外野手にとって肝といえる、1歩目のスタートをよりスムーズに切ることができる。特注のサングラスが、球際での好プレーを生む1つの要因になっている。

昨夏の東京五輪男子卓球では、屋内競技にもかかわらず「SWANS」製のサングラスを使用した水谷隼が、混合ダブルスで金メダルを獲得。水谷も近本も、技術の発展で明るくなりすぎた会場の照明により、ボールの「見え方」に不安を抱えていた。これをサングラスが一発で解消してみせた。

近本と「SWANS」の出合いは20年春季キャンプ。それまで海外製のものを使用していたが、フィット感やレンズの見え方を気に入り、乗り換えた。山本光学の工場が、近本の地元兵庫・淡路島にあるという縁もあった。

「サングラスは太陽のまぶしさを抑えるためだけのアイテムじゃない」。今夏、ウェブミーティングした際にも、あらためてその性能を実感していたという。守備の名手は、「目」へのこだわりも人一倍だ。【阪神担当 中野椋】

◆山本光学 東大阪市に本社を置く光学レンズ、サングラス、ヘルメットなどの製造、販売会社。1911年に創業。サングラスを製造する兵庫・淡路工場が近本の地元という縁もあり、20年から着用を開始し、21年1月に用品契約を締結した。

巨人対阪神 7回裏巨人2死、近本はウォーカーの中飛を好捕する(2022年4月30日撮影)
巨人対阪神 7回裏巨人2死、近本はウォーカーの中飛を好捕する(2022年4月30日撮影)