将来の日本を背負う若侍がいる。3月に予定されていた強化試合・台湾戦(東京ドーム)は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、23年3月には第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催が見込まれる。侍ジャパンの経験がない12球団の若手有望株にスポットを当てる「未来の侍たち」第10回。

2月、ブルペンで投球する西武与座
2月、ブルペンで投球する西武与座

独特の個性、希少な特徴は国際大会で、特に大きな武器になる。過去の侍にも渡辺俊介、牧田和久らサブマリン投手が名を連ねてきた。今、開花の予感を秘めているアンダースローがいる。西武与座海人投手(26)。「膝下」でリリースし、まさに浮き上がる球を、テンポよく投げ込む。

18年にはトミー・ジョン手術をするなど、アマ時代も含め、これまで華やかな実績はない。昨季は15試合で1勝1敗、防御率2・79。ただ、シーズン終盤で好投を続けており、その数字以上に首脳陣も期待を寄せる。今季は開幕から先発ローテーション入りに大きく近づいている。

西武与座の年度別成績
西武与座の年度別成績

日本代表の試合で印象に残っている場面も実に、下手投げらしい。13年WBC台湾戦。鳥谷が9回2死一塁から盗塁し、井端の適時打で同点…という場面ではない。その裏。牧田が無死一塁からバント小飛球をダイビングキャッチした場面だ。打たせてアウトを積み重ねるアンダースローは、投手のフィールディングも重要。だからこそ「大事な場面でバントをフライにさせて自分で捕りに行く。すごいな」と心に刻まれた。

生き残るために腕を下げてきた。沖縄尚学2年時にオーバーからサイドに転向。当時は「4番手ぐらい。試合に出られるチャンスはほぼなかった」との立場。監督からのアドバイスもあって、人にはない特徴を求めた。岐阜経大1年の終わりには制球力向上のため、さらにリリースを下げた。渡辺や牧田の映像を何度も見た。グラブの使い方、テークバック、体の角度。「自分とどう違うのか」。研究を重ね、現在の形にたどり着いた。

今は侍に自分が入る姿など想像できない。ただ、「この世界にいる以上はそういうのにも選ばれてみたい」。最速は135キロ。作り上げた個性を生かし、“変則枠”の候補に名乗りを上げていく。【上田悠太】