巨人にまったく覇気がない。まだ8月の終わり。でもここは完全に秋風が吹いている。粘りもなければ執念もない。さすがに悲しくなった。1985年に日本一になってから、天国から地獄に落ちたタイガースを見ているようだ。いくら巨人でも歯止めが効かない状況、残り試合、どう戦うのか。別の意味で注目に値する巨人の動向である。

そんな巨人に8月19日からの3連戦で3連勝。完勝を続けた阪神は、残暑どころかますます熱い戦いを演じている。西勇、藤浪、才木という右先発3枚で圧倒。対策も狙いもない巨人には負ける要素なし? これで借金は「1」になり、Aクラス入りがはっきり見えてきた。

残り試合は30を切った。

監督、矢野の采配を見るのも残りわずかだ。開幕前の「予祝」はなんやった? 開幕していきなりの9連敗は一体どうしたんや? それでもめげずに続けているホームランを打った選手にメダルをかけるパフォーマンスは、もうええんとちゃう? と思ってしまうけど、それらを含めて、矢野の足跡だ。

しかし、必ず成し遂げてもらいたい数字的結果がある。それは勝率5割。これだけは必ずキープしてほしいのだ。優勝の可能性は極めて低いが、Aクラスになり、クライマックス・シリーズ(CS)の出場権は現状、獲得できる可能性は高い。ただ3位に入ったからといって、中身は重要。勝率5割を割り込み、マイナスでCSに出ても、正直、胸を張れるものではない。

過去、こういうケースで勝ち上がり、下克上だとかもてはやされた例もあるけど、正直、喜べるものではない。そもそも勝率には関係なくAクラスに入れば、自動的にCS権が与えられることになっている。極端な話、シーズンが2強で進み、3位以下が大混戦で、ようやく3位に滑り込んだとしても、借金2ケタなんてこともある。規約に明記されていない以上、借金2ケタでのCS進出もあり得る。なにか線引きが必要ではと思う。

そうならないためにも、阪神には貯金でのCS進出を絶対の命題にしてもらいたい。それでこそ、Aクラスの値打ちであり、長いシーズンをよくがんばった…という証し。矢野にはここを意識して戦ってほしいのだ。

今年限りで辞める監督だ。残り試合、矢野が何を語り、どう動くのか。開幕前から決まっていたことが、大きな波や谷を越えて、フィナーレを迎える。選手時代からの付き合いで、常に真摯(しんし)に野球論を僕に語ってくれた矢野。残りは悔いのないように…と月並みになってしまうけど、勝率5割以上でのフィニッシュだけは守ってくれ。あとは好き放題、やってくれて結構だから…。(敬称略)

【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)