15年前なら、怒りまくっていたろう。4月26日の甲子園。巨人戦で見せ場は作ったものの、終盤にとどめを刺されての完敗。試合後の岡田彰布の言動を注目していたが、意外なほど、淡々としていた。

前回の監督時、50歳の監督はストレートに感情をぶつけ、この巨人戦敗戦には、起用の意図が伝わらなかった選手を、糾弾していたに違いない。

この試合、2番に打順を変えた梅野には、岡田なりの狙いがあった。1番近本が絶好調で、出塁率が高い。そこで不振を極める梅野を2番で使い、強引さを消し、バントを含め、走者を進めるバッティングで、修正を図った。ところが、これが伝わらなかった。岡田がこの試合のキーマンに指名したように、ことごとくチャンスで回り、梅野は応えられなかった。

50歳の頃の岡田なら、頭にきて記者会見を拒否していたかもしれない。だが今回は丁寧にトラ番に対応していた。昔を知る者として少しの驚きがあった。

まだシーズンの7分の1。自分が繰り出した戦略が失敗したことを認めることに抵抗はない。それよりも「先」を見る。岡田の長いシーズンを戦う時の考えは、昔も今も変わりはない。

「シーズンで一番重要な時期は? と聞かれたら、オレは9月、そして10月やと答える。そこが勝負どころ。それまでは、ほどほどでエエんよ。基本、勝率5割。ここをキープしていたら、必ずチャンスがくる」。あくまで5割を意識して戦う。これは今年も同じである。

シーズンに入る前、岡田としゃべった時に、こう語っている。「開幕ダッシュ? そんなん、気にしてないわ。大きく出遅れることがないなら、勝って負けてでいい。だってウチは戦っていくにつれて強くなっていくチームやと思っている。それが8月、9月、10月に形になって表れると考えているし、それだけの伸びしろがあるチームなんよ」。

となれば現状をどう見ているのか。岡田流でいくと、普通のペース。なにせまだ貯金がある(4月26日現在で貯金1)。勝率5割をキープしていけば、それで十分。それが4月、5月の戦い方なのだ。

その巨人戦、反省すべきプレーは多かったけど、岡田はそんな中で、「明日」につながる収穫を見つけにかかる。この試合ではリリーフして2イニング、ピシャリと抑えた及川。続けての好投に、岡田のアンテナが反応する。あのスピード、キレのよさがあれば、重要な場面で十分に起用できる。戦いながら、新たな可能性を探し出すのも、岡田の得意技といえる。

マイナスばかりではない。そこに見えたプラスを掘り起こす。及川はばっちりとフィットした。「勝負のポイントはどこになる、とよく聞かれるけど、オレはブルペンやと思っている。いまの野球は正味、ブルペン次第。ここが厚いチームが最後に笑う。ウチもそう。ここに当てはまる投手は何人いてもいい」。2005年以降、常勝チームを作った基礎は、強力なブルペンだった。それを今回も構築する。及川はそのピースになると確信した夜となった。

負けてもただでは転ばない。キラリと光るわずかな光明を見いだす時期。岡田はそれを大切にする。湯浅が戻ってくるまで、岩崎、加治屋、石井、岩貞、K・ケラー、ビーズリーで守る。そこに及川が加わった。もちろんファームにいる浜地など、まだ強力になる余地を十分に残している。ここを確固たるものにすれば、ライバルに負けるわけはない。

ファンには不満かもしれない。ドンドン貯金を作り、圧倒的にセ界をリードしてほしいと願うだろうけど、そうはうまくはいかない。いまの意外なほどの焦りのなさ、落ち着きは長い監督のキャリアによるもの。勝ったり負けたりしながら、着実にチーム固めは続いている。こう信じてみていると、安心感が湧いてくるのだが…。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)