日刊スポーツの評論家、梨田昌孝と久しぶりに会った。3月6日の甲子園。評論の仕事で来ていた梨田に聞いてみた。「オープン戦といえども連敗はこたえる?」。阪神はここまで勝ちはなし。連敗中だけに、監督の心持ちはいかに。

「関係ない。まったく関係ないよ。この時期の試合で、勝ち負けは気にしない。監督のほとんどはそう思っている。岡田監督だって、そうだと思うよ」。梨田は監督時代、オープン戦で勝っても、選手と握手することもなかったという。それくらいの位置付けの期間。梨田の言葉を聞いたあと。試合を見たが、この日も負けて6連敗。それも失策がすべて失点に絡み、監督の岡田彰布が最も嫌う内容だった。

試合後、きっと岡田の口から厳しいコメントが発せられると思っていたら、まったく違った。穏やかそのもの。時々、チェックポイントに言及したものの、怒りの爆弾投下はなかった。

勝てない。エラーが出る。これらの結果をどう分析するか。気の緩みと指摘する声もある。リーグ優勝、日本一を果たし、チーム全体に緩みが出ているのではないか。「緩み」がキーワードになるということか。

そういえば沖縄キャンプ中、中日OBと話す機会があった。中日の強い時代の主力だったが、振り返ればチームの中に気の緩みが存在した、という。「落合さんが監督の時代、優勝した翌年は、少し緩んだかな…と。それで連覇できなかったことがあった」。すべてに管理し、決して妥協を許さなかった落合博満が監督であっても、防げなかったものがあったのだ。

それを岡田にぶつけてみた。「いまのチームに限って、慢心や緩みはないはず。それは選手の動きをみたらわかる。高い水準の自覚があるわけよ。だから心の問題で弱くなることはない」。はっきりと言い切った。

梨田が言うようにオープン戦の勝敗は、なんの目途にもならない。オープン戦で優勝しても賞金が出るわけでなく、特典がついてくるわけでもない。要するに割り切りが必要で、岡田もじっと我慢している状況といえる。

ただ拍子抜けというのか、先に書いたように、穏やか過ぎるのが気になって仕方ない。今年は「連覇」を堂々と口にし、そのためにさらなるシビアな言動に出ると思っていただけに、岡田のコメント力が優しすぎると感じている。

岡田は常にマイナスから物事を考え、目標設定を決めたら、逆算方式でチームを作り上げる監督である。当面の設定は、いつ「本番モード」に入るかであるが、あと1週間後。3月15日あたりから、臨戦態勢に入るとみている。

表面上は穏やかであっても、その実、見えないところではフツフツと怒りを示すとの裏情報を聞いた。岡田本人もいよいよ本番モードに。連覇の難しさを胸に、もう間もなく、岡田の連覇への号令が出る。【内匠宏幸】(敬称略)