「うーん、それはないわ」。このひと言だけで、次の話に移った。
5月24日、甲子園で行われた巨人3連戦の初戦。練習前に阪神監督の岡田彰布と少しの時間、話した。話題は一向に上向かぬ打線について。「ここまで悪いとは…。この状態、まだ続くかもしれんな」と、岡田はさえない顔で漏らした。
こういう状況に陥った時、岡田という人は、大胆になにがしかの手を打つ。これまでもそうだった。打開策を求め、戦略を練り、窮地を脱してきた。
だから今回、どうする? そこである選手の名前を出した。巨人戦が終われば交流戦に入る。切り替えるには絶好のタイミング。「そこで交流戦から佐藤輝を戻すとかは?」と問うてみた。すると岡田は間髪入れず、最初のフレーズ。「それはないわ」と言い切った。
巨人3連戦、阪神の得点は「0」「3」「1」と3戦で4得点(巨人もひどくて3得点)。岡田がぼやくのも仕方ないか。そこで起爆剤はないか、と考えれば、それは2軍に落ちた佐藤輝を戻すことではないか。ファンの間でも話題になっているのだが、岡田にはその気なし。あえて触れたくない、といった風情が感じられた。
この24日、2軍戦をテレビで確認していた。わずかな時間でも岡田は2軍戦をチェックしているのだが、この試合で佐藤輝は2三振。守りでは2失策。兆しすら伝わらない内容だった。「佐藤輝? それより小野寺なんか、ええスイングしてたよ」と口にした通り、今回、1軍に戻ることが決まった。チェックして、いいものはいい…と判断し、それなりに処遇する。小野寺は端的な例であり、佐藤輝は対象外としただけのことである。
DH制がある交流戦。佐藤輝は条件的に適したバッターでは、という声もあるが、岡田の考えは違った。監督自身、理由は明かさないが、ある球団関係者から岡田の思いを聞くことができた。
「結果が伴ってくれば話は別だが、名前だけで戻すことはない。それは他の選手への影響を監督は考えている。もし、この状態で佐藤輝を上げれば、2軍の選手はどう思うか? がんばっている選手に失礼にあたると考えている。だからすべてが納得できる状態でない限り、(1軍復帰は)ない」と断言した。
ノイジー、井上を2軍に落とし、何とか上昇への手がかりをつかみにいくが、そこには佐藤輝の名はなかった。苦しいけど、そこには絶対に守らねばならない岡田流のルールがある。これをクリアしない限り、佐藤輝の1軍復帰はない。
「交流戦なあ。どうなるんやろ。パ・リーグのピッチャーは力で押してくるし、それに打ち負けては勝負にならん。対策? そらデータも大切よ。ただ交流戦を8年も経験した身として、実際に対峙(たいじ)した時の肌感覚というのかな。これが大事になるのよ」。佐藤輝抜きで挑む交流戦。監督の腹は固まっている。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




