巨人が負けた。阪神のチャンスが残った…。そんな紙面を想像していたら、まったく違った。26日付のスポーツ新聞(大阪版)は佐藤輝にまつわる話題が1面だった。

それは23日の巨人戦のこと。勝負どころでの佐藤輝のバッティングが焦点になった。6回無死二塁で、佐藤輝の打席。最低でも走者を三塁に進めることが求められる場面で平凡なフライアウト。これに監督の岡田彰布が言及。「次に同じような場面がきたら、代打を送り、バントさせる」と言い切った。

ここで見過ごすことのできない岡田の悔いるコメントがあった。「進塁打のサインを出せばよかった」。

これでわかるように、あの打席、佐藤輝に「制約」はなかったということ。フリーに打て。だから佐藤輝は自由な打撃を行ったということになる。

そこにベンチと打席の間に、意思統一はなかった。サインを出さなくても、ベンチは進塁打を最低、打ってくれるものと考え、打席で佐藤輝はサインがないから、制約なく打って出た。平凡な飛球は、あくまで結果に過ぎなかった。

「進塁打」のサインは存在する。今回の場合、打者にサインが出れば、バント以外にするべき打撃は引っ張りに出て、二塁ゴロを打ち走者を三塁に進めること。仮にサインが出なくても、バッターが考えて、進塁打を打ってくれる、とベンチは当たり前のように期待する。でも、今回は制約がなかった。だから岡田は悔いたのだろう。

そこで思うのが監督と打者の間に入るべきコーチの存在なのだ。打撃コーチは当然、佐藤輝が最低、走者を進めるバッティングをしてくれると考えていたはず。ただ進塁打のサインは出ていない。そこでコーチは佐藤輝に助言、アドバイスを送ったかどうか。監督の意図、狙い、思惑を踏まえ、コーチが動いてもいいところ、見た限りはなにもなかった。

コーチはあくまで監督の考えをサポートする立場。岡田の存在がベンチの中で絶大だからか、的確なコーチングが行われているのかどうか。そこはこれまで問われていなかったが、今回はどうしても見過ごすことはできなかった。

阪神の現在の打線。先発メンバーの投手を除く8人の中、左バッターは5人もいる。近本、中野、佐藤輝、前川、木浪だが、打撃コーチは今岡、水口ともに右打者。「左バッターをコーチするのは難しい。同じように左バッター出身のコーチは指導するのも難しい」。これが岡田の持論である。だから前体制下から左の打撃コーチは金森くらいだったのではないか。

まあ、佐藤輝はそこまで責め立てられるものではない…と思うのだが、岡田のいう「野球勘」は身につけなければならない。時に犠牲的なバッティング。本人もわかっていると思うのだが…。【内匠宏幸】(敬称略)

阪神岡田彰布監督(左)(2024年9月23日撮影)
阪神岡田彰布監督(左)(2024年9月23日撮影)