いつもは2軍戦から注目選手を取り上げる田村藤夫氏(62)が、甲子園取材を通じて得た情報を元に、「特別編」として高校野球を全4回でリポートする。

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野球という同じ競技でも、高校野球とプロ野球では戦術、考え方で大きく異なる部分がいくつかある。今回、甲子園であらためてその違いを感じた。その違いは何に由来するのだろうと考えながら、高校生の動きを追う時間は本当に充実していた。

印象に残った守備について紹介したい。それが無死一、三塁での守り方だった。8月14日の2回戦、聖光学院-横浜。2-2の同点の5回裏、聖光学院の無死一、三塁の好機で、横浜は通常の守備位置で併殺狙いだった。聖光学院・安田の打球は二ゴロ。併殺は成立し、その間に3点目が入った。そして、この3点目が決勝点となり、聖光学院が1点差で勝利した。

同点の5回で併殺を念頭に守った横浜の守りは、妥当な選択だったと感じる。そして1点差の結果を踏まえた時、非常に難しい判断になったなと思わざるを得なかった。

横浜対聖光学院 5回裏聖光学院無死一、三塁、併殺の間に生還し喜ぶ赤堀(2022年8月14日)
横浜対聖光学院 5回裏聖光学院無死一、三塁、併殺の間に生還し喜ぶ赤堀(2022年8月14日)
横浜対聖光学院 聖光学院に敗れ、肩を落として引き揚げる横浜ナイン(2022年8月14日)
横浜対聖光学院 聖光学院に敗れ、肩を落として引き揚げる横浜ナイン(2022年8月14日)

高校野球を何試合も見る中で、同様に無死一、三塁で内野ゴロが飛んだ時、チームによって守り方が異なった。同じような試合中盤で、一ゴロを捕球した一塁手がまず三塁走者を見て、それから二塁に送球。結果、三塁走者は生還し、打者走者は残ったケースもあった。

プロ野球では同点の試合終盤を除けば、同様の状況ではほぼ併殺狙いとなる。攻撃側が内野ゴロが飛んだ瞬間に三塁走者がスタートを切るためで、併殺間に1点入ればOKという考え方になっている。守備側はこれを理解した上で、1失点はやむを得ず併殺を狙い、走者を残さないことを優先する。

先述したように例外はある。接戦の試合終盤、オリックス山本のような1点を奪うことが困難が予想される投手の場合、また試合終盤の中間守備で緩いゴロが飛んだケース。こうした状況ではホームで刺すこともある。緩いゴロは併殺が難しくなるためで、「速いゴロは併殺、緩いゴロはホーム」という決まりが一般的だ。そうした場合を除けば、守る側はほぼ併殺狙いになる。

高校野球はこれに比べると、判断材料が圧倒的に多い。初見の投手と対戦し、計算通りにいかないことも多い高校生でどう守るか。相手が好投手ならば1点の重みが違ってくる。併殺優先と割り切れないケースも出てくる。

三塁走者が内野ゴロでスタートしないことも、判断をさらに難しくさせる。内野手はまず三塁走者をけん制し、それから送球したのでは併殺が奪いにくくなる。それこそ相手投手と打線の力関係を考え、点差とイニング、味方の守備力を加味しながらの決断になるだろう。これは監督も悩みどころだなと、試合を見ていて感じる。

失点を嫌がることでアウトが稼げず、その結果、走者をためてしまいバッテリーのプレッシャーが増し、四球や長打で大量失点ということも高校野球では十分にあり得る。

プロでは当然のことながら、どの内野手も守備範囲は広く、肩も強い。併殺成立の可能性は高く、その分三塁走者の生還は割り切って考えることができる。

だが、高校野球は事情が異なる。一発勝負の晴れ舞台の甲子園で一、三塁の守り方が勝敗の分岐点となることもあるんだなと、展開が読みづらい高校野球の難しさに思いは尽きなかった。(日刊スポーツ評論家)

横浜対聖光学院 3-2で勝利し、大喜びで応援席に向かう聖光学院の選手たち(2022年8月14日)
横浜対聖光学院 3-2で勝利し、大喜びで応援席に向かう聖光学院の選手たち(2022年8月14日)