台湾で行われたU18(18歳以下)W杯で高校ジャパンが初優勝し、あらためて日本の「スモールベースボール」が注目された。
バントや走塁など小技を駆使して1点を奪い、守り勝つ。馬淵史郎監督(67=明徳義塾監督)が「世界で勝つために」とこだわり抜いたスタイルだった。走攻守そろった「好選手」をそろえたメンバー構成は、馬淵監督が目指す野球を分かりやすく示していた。
一方で、最大の関心事は、史上最多の高校通算140本塁打を放っていた花巻東(岩手)佐々木麟太郎内野手を選ぶか否か、だったのではないか。
選出される可能性は直前まで残っていた。夏の甲子園大会序盤の段階まではリスト入りしていたと、あとから聞いた。甲子園4試合で本塁打こそ出なかったが、そのパフォーマンスは侍ジャパンスタッフの目にも魅力的に映っていた。
最終20人の中に佐々木の名前はなかった。コンディション不良が理由の1つだったという。メンバー決定後、馬淵監督にストレートに本当の評価を聞いた。
「本当にあのスイングはすごい。高校生で、あんなスイングは見られません。すごい打者ですよ」
佐々木を唯一無二の存在と認めていた。今回のW杯はスモールベースボールで戦うと腹を決めていた同監督を最後まで迷わせた。しかも、コンディションが万全でないと分かっているにもかかわらず。その事実が、佐々木の価値を十分に示しているように思う。
あの高校ジャパンの打線に入ったらどんな働きをしただろうか。妄想したくなるのは記者だけではないはずだ。だが、そんな怪物スラッガーを外したことで、馬淵監督の覚悟や信念が鮮明に示されたのも、また事実だと思う。【アマ野球担当 柏原誠】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)