甲子園球場に入ってギョッとした。ずらりと並んだマスク姿の職員。そこでアルコール消毒をうながされた。さらに耳の穴に検温計を突っ込まれる。「35度9分。どうぞ」。広島を相手に今年初めて甲子園でのオープン戦が行われる予定だった4日。ウワサには聞いていたが、ものものしい。
言うまでもない新型コロナ・ウイルス対策だ。選手たちはそうはいかないが球団関係者も記者も全員がマスク姿。取材エリアも制限された。こちらも何とかマスクをやりくりした。こんな光景は56歳にして初めて、いや誰にとっても初めてだろう。
そんな中、この試合ではなかなかの“楽しみな偶然”が予定されていた。当初はファームでの近大戦(これも雨天中止になったのだが)に登板する予定だった藤浪晋太郎が、1軍の広島戦に投げることに変更されたのだ。同戦に登板する予定だった高橋遥人のコンディションを考慮しての結果。それを知らずに不思議そうにしていたのは、他でもない広島ナインだった。
「なんで晋太郎が来ることになったんスか?」。そう聞いたのは広島の主砲・鈴木誠也だ。鈴木は2月23日に沖縄で行われたオープン戦で藤浪と対戦している。そこで安打こそなかったが中堅への犠飛と左飛、ストレートをとらえ、いずれも会心の当たりだった。
制球難が課題になっている藤浪は右打者方向にすっぽ抜けることが多かった。従って昨年はオープン戦で藤浪が投げる際は各球団、右の主力打者は対戦を避けるのが通例になっていた。しかし鈴木は平然と打席に立った。
藤浪と鈴木は高卒8年目の同学年で仲も良い。プロ入り直後は甲子園のスターだった藤浪がリードし、それを鈴木が追い掛ける形だったが数年前から立場が逆転。鈴木は日本の主砲として存在感を発揮している。
それだけに復活を狙う藤浪の相手として申し分ないはず。早々と甲子園でこの対戦が見られるのか。無観客試合でファンの方には申し訳ないが楽しませてもらおう。そう思っていたが、雨で流れた。
「ローテーションに入ってきますかね?」。鈴木も藤浪を気にしている。公式戦で2人が対戦するのは野球ファンの望みだろう。日本列島を包むイヤなムードを吹き飛ばすようなスターの活躍を、満員の観衆で埋まったスタジアムで早く見たい。そう願うしかない。(敬称略)




