「先に点はやらない」という秋山拓巳の気迫が伝わってきた。5日巨人戦(甲子園)はわずか2回で降板。そこから中5日、いやナイターからデーゲームで“中4日半”か。それでこの好投はエース級といえる。

カード前まで2勝7敗と苦手にしていたマツダスタジアムでスカッと連勝できたのもよかった。その陰には目立たないけれど、正捕手・梅野隆太郎の存在があったのではないか。

秋山をリードし、好調の広島打線に付けいる隙を与えなかった。前日は西勇輝と組んだ。勝てていなかった西勇の登板では過去2試合、スタメンマスクを坂本誠志郎に譲っていた。しかし今回は梅野でしっかり100勝目をアシスト。その結果が敵地での連勝で両投手に白星もついた。これは大きい結果だ。

青柳晃洋が先発した7日ヤクルト戦(甲子園)で12失点。スタメンマスクだった梅野は途中でベンチに下がった。9日の同カードでは坂本がスタメンだったがこの日も大量失点で負け、少しイヤな流れだった。

「バッテリーでもっと考えてほしい」。指揮官・矢野燿大が敗戦後に繰り返す言葉だ。投手も含まれるが重点は捕手にある。自身も苦労の末、正捕手の座をつかんだ矢野だけに思いはあるだろう。梅野の休養を含め、起用に変化を付けたい狙いも見える。

長い間、野球の取材をしていてリードの話はつくづく難しい。状況によって変化するものだし、何より正解がないからだ。追い込んだ後でズバッとストレートで三振を取れば「強気で押した」と言われるが打たれれば「工夫がない」。

要求したところに球が来るとは限らないし、だからといって投手のせいにするようではベンチから信頼してもらえない。梅野と過去に交わした雑談でも「リードはなかなかねえ…」と苦笑していたこともある。

結果を出すしかない。プロなら何でもそうだが投手の出来が大きく関係するだけに捕手はつらい。それでも梅野は踏ん張っていると思う。少し差が開いてきたとはいえ、油断できない三つどもえの中、巨人、ヤクルトと比べ、ここが強みなのは間違いない。

秋山がドラフト4位で指名されたとき、上位指名でなく悔し涙だったことを思い出す。だけど「ドラ4」は豊作の順位だ。イチロー、中村紀洋、桧山進次郎、金本知憲…。そして梅野という「ドラ4」もいる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 2回裏広島1死一塁、坂倉の二盗を阻止する梅野(中央)(撮影・前田充)
広島対阪神 2回裏広島1死一塁、坂倉の二盗を阻止する梅野(中央)(撮影・前田充)