投げてはもうエースと呼ぶべき青柳晃洋が129球での完投勝利。打っては3回に佐藤輝明が先制2ラン、スタメン復帰の大山悠輔も8回にダメ押し4号ソロときた。投打の主役が活躍してのG倒は虎党にとってこれ以上ない喜びだろう。

しかし率直に言わせてもらえば「よう勝てたなあ」という感じだ。そう思わせたのは攻守にわたって“詰めの甘さ”というようなものを感じたからだ。

3得点すべてが本塁打によるもの。2回、6回の満塁機ではいずれも梅野隆太郎が倒れた。梅野は4回無走者の場面で安打を放っていた。難しいことだが1本出るところが違っていれば-という思いは残る。

7回もそうだ。四球で出た青柳を近本光司が犠打で送ってまで追加点を狙った1死二塁の場面。中野拓夢、佐藤輝が倒れて無得点に終わっている。この3度のチャンスで1点でも取れていれば試合の流れはもっとラクになっていたかもしれない。前日までは地味ながらもしぶとい攻撃で得点を重ねていただけに、余計、そう感じた。

そして守備だ。5回無死一塁で松原聖弥を二ゴロに切った。併殺! と思った次の瞬間、二塁スタメンの小幡竜平が二塁カバーの中野に悪送球。これで無死一、三塁と危機を広げてしまう。小幡はもちろん、中野もまず捕球という姿勢でいけば捕れない球ではなかったように見えた。2死から近本の美技が出て救われたが、ここは危なかった。

さらに7回だ。1死一塁から松原が遊ゴロ。途中出場の二塁・山本泰寛がピボットプレーから一塁へ送球。しかしこれがワンバウンドでそれてしまう。失策はつかないがこれもミスだろう。最後に岡本和真の1発が出たし、本当に紙一重の勝利。あらためて青柳の好投を褒めるしかない。

それでも、この勝利は大きい。敵将・原辰徳は青柳対策なのかどうか主軸・坂本勇人を下げてきた。そして東京ドームを驚かせた菅野智之の3回降板である。「個人に配慮していては個人軍になるからね。我々は巨人軍」。かつての名言が思い出される名将ならではの大胆な策だが、大胆なだけに的中しなければ影響はあるし、つけいる隙はあると感じる。

だからこそ、ここは“スイープ”が必要だ。東京ドームで首位巨人相手に3連勝できる絶好の機会かもしれない。いや、そうしなければならないときだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 8回裏巨人2死三塁、丸佳浩を二ゴロに打ち取り笑顔を見せる青柳(撮影・上田博志)
巨人対阪神 8回裏巨人2死三塁、丸佳浩を二ゴロに打ち取り笑顔を見せる青柳(撮影・上田博志)