初戦に勝って巨人に3連勝だとうわごとのように書いていたが本当になった。背景には初戦後に菅野智之を登録抹消、この試合前に坂本勇人を抹消と投打の柱を欠き、下降線ムードの巨人に助けられた印象もあるが、もちろん、それも勝負。1カ月前に喫した3連敗の雪辱を果たす3連勝だ。

連勝中だからか先制されても負ける気がしない。ウォーカーの1発だけで7回を抑えた西純矢の好投。若い投手をアシストし、15安打を放った打線のつながりと文句なしの展開。勝てるときはこんなものという典型的な流れだ。

その快勝劇の中で「頑張っているな」と思いをはせた瞬間があった。1点リードの8回。この回先頭の中野拓夢が一塁へヘッスラする内野安打で出て、さらにこの日4安打の糸原健斗が四球で歩いた無死一、二塁の好機。ここは追加点が欲しい場面だ。

打席に入ったのは高山俊だった。6回に代打で途中出場。そのまま左翼の守備に入っており、この日、2度目の打席だ。6回は一ゴロだったし、ここは打ってスカッとできるか。そう思ったが1球、ボールを見逃した後、バントの構えだ。

犠打か。一瞬、驚いた。高山は2球目をファウルしたが、その3球目。投手と一塁の間に転がす、この状況では理想的なバントを成功させて走者を送った。その後、満塁になってからベテラン糸井嘉男の一打が出たのは承知の通りだ。

「打ちたいだろうな」と思った。ドラフト1位で入団し、16年の新人王。久々の大物打者と思ったら後がなかなか続かない。7年目の今季、後がないようなつもりで戦っていると思う。今季も2軍で結果を出し、苦労して昇格してきた。

犠打はあるのかと思ったがこれが通算6個目。1年に1個ペースの犠打だが、この成功がダメ押しにつながった。6回の一ゴロも同点の1死一、二塁で思い切り引っ張った当たり。結果的にチーム打撃で梅野隆太郎の勝ち越し打につながっている。

押せ押せの試合途中で小幡竜平と代わり、ひっそり退いた。「元・新人王」とすれば実に地味な働きだ。だが勝利に貢献したのは間違いない。「ビッグウエーブにしていきたい」。快勝後、指揮官・矢野燿大はそう言った。それを実現するためには、この日、高山が体現したチーム全体での戦いが必要なのは言うまでもない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 8回表阪神1死満塁、糸井は中前に2点適時打を放つ(撮影・上田博志)
巨人対阪神 8回表阪神1死満塁、糸井は中前に2点適時打を放つ(撮影・上田博志)