こらエエ…。思わず口に出してしまった。立場を考えれば恥ずかしいが率直な気持ちだ。もちろん佐藤輝明の逆転3ランである。2点ビハインドの6回2死走者なしからつないで、これしかないという1発。失策も多いし、正直、おやっ? というプレーもあるが、それでもこんなことをやってのけられる選手はそうはいない。これこそ「スター」のゆえんだ。
その後すぐ、こらエエ…と思う瞬間が続いた。4点目をマークした木浪聖也の適時打だ。指揮官・岡田彰布も「4点目が大きかった」と振り返ったようにダメ押しともなった一打である。逆転しても1点差なら虎党がドキドキするのはもちろん、ブルペン陣だってキツい。その意味でもいい適時打になった。
同時に思わずニヤリとしてしまったのは先日、横浜スタジアムで交わした会話があったからだ。熱心な虎党なら先刻、承知だろうが直前の横浜遠征、そしてその前の広島マツダスタジアムと木浪は何かと焦点になることが多かった。
犠打失敗、直近では8月28日のDeNA戦など快音の出ないポップフライの打席が3度、続き、1点を追う9回、代打を出された。ついていないというか、なかなかキツい日々が続いていると思う。
岡田は選手の結果が悪いときはハッキリと文句を言う、最近ではめずらしいタイプの指揮官だが前任者の矢野燿大は違った。「選手の背中を押す」という今風スタイルだ。だが、ほとんど例外的にしかる選手がいた。木浪だ。
監督から見て(勤め人なら上司に当たりだろうが)しかりやすいタイプの人はいる。性格が真面目で一生懸命、しかってもそっぽを向くことはない性格などがその要素かもしれない。独断だが、いまの阪神なら木浪かなと感じている。
それでもひょっとしてメンタルにきてるか、などと気になり、練習の合間、声をかけた。「元気ないんかいな」と。すると木浪は何と言ったか。「そう見えますか? 元気なかったら(こちらの)顔も見てませんよ」。キッパリ、そんな話をしたのである。そういう男だ。
木浪だけではない。結果が出なければ元気なく見えるものだ。だが勝てば一気に雰囲気は変わる。岡田が言うまでもなくプロは結果だ。順位以前に虎党を元気にさせるため、まずは巨人にもう1つ勝ちたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




