あえて言わせてもらえばルーキー・伊原陵人に“黒星”がつかなかったのはよかったと思う。「勝敗は関係ないオープン戦で何を言ってるんだ」と言われるかもしれないが、今季は、いや、今季こそ、こういう流れを続けていくことが大事と感じるからだ。

指揮官が藤川球児に代わったこともあり、選手起用にも変化が見られる。もっとも大きなものは先発投手だろう。若い門別啓人が先発スタッフ入りを確定し、富田蓮も先発で起用される方向。さらに新加入のデュプランティエも投げるかもしれない。

そういう新しい顔ぶれの投手たちが序盤に失点するケースはシーズン中も、当然、起こりえる。そこで打線も沈黙し、そのまま簡単に負けてしまえば、投手側も意気消沈する。逆に自分が打たれてもチームが打ち勝てば「よし、今度はオレが…!」とムードもよくなるものだ。そもそもファンも面白くない。

このヤクルト戦、先発スタッフ入りを目指す位置づけの伊原が序盤に失点した。1回に1失点、2回は2失点。いずれも四球が絡む、よくない形。続けてきた実戦の無失点も終了した。ここで打線まで沈黙していれば…。

だが打者はしっかり働いた。佐藤輝明も、森下翔太も、大山悠輔も、木浪聖也も打った。それぞれが持ち味を発揮。中盤に突き放されそうになったが、ジリジリ追い上げ、同点に。繰り返すがオープン戦、しかもドローとはいえ、こういう展開はいいと思う。

もっとも指揮官は冷静だ。打線についても「まあ、ただの準備ですから。まだ何も始まっていないですからね。準備しているまでです」。機動力も絡めた3回の攻撃についても「どうですかね、たまたまだと思いますけどね」。努めて落ち着き、手の内を見せない姿勢に徹している。それはそれで結構だ。

大リーグ開幕戦が東京ドームで行われ、センバツも始まった。いよいよ野球シーズン…という中でも虎党の興味は阪神だ。今年初登場の神宮球場には2万1510人が集まり、半分以上が虎党というムード。

そんな中、集中したカブス、ドジャースとの対戦が終わり「燃え尽き症候群」みたいなことも? と予測していたが、それは外れた。それどころか両軍との対戦を経て、ムードが上がってきている。歓迎すべきことだと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト無死、ホセ・オスナの打球に反応するネルソン(撮影・井上学)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト無死、ホセ・オスナの打球に反応するネルソン(撮影・井上学)
ヤクルト対阪神 引き揚げる阪神佐藤輝(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 引き揚げる阪神佐藤輝(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 試合を終え、引き揚げる阪神藤川監督(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 試合を終え、引き揚げる阪神藤川監督(撮影・足立雅史)